「消費税が増税になりますし、今年中(平成24年)に入居すれば、税金が最大300万円戻ってきます!マイホーム、買うなら今ですよ!というか今買わなければ損しますよ!」
日曜の昼間、子供を連れて暇つぶしに何気なくちょっと行ってみた住宅展示場で、こんな風に営業マンに言われて、なんとなくその気になってしまっている方、いらっしゃいませんか?
住宅を購入する場合、建物には消費税がかかりますので、増税前と増税後では消費者の負担額が数十万単位で変わってきます。2000万円の建物を購入した場合、税率が5%の現在であれば消費税額は100万円、8%に上がると160万円、10%に上がれば200万円になります。
もともとマイホームの購入を予定していた方も、そうでない方も、増税を期に増税前に購入することを検討する方が多いのではないでしょうか。
住宅メーカー等にとっては、増税後の需要冷え込みのダメージを少なくする為にも、増税前の需要をしっかり掴んでおきたいところですので、当然、増税前に一気に販売攻勢を仕掛けてきます。
その際、営業マンの口からは冒頭のように消費税増税とセットで、必ず『住宅ローン控除』の話が出てきます。マイホーム購入を1度でも検討されたことのある方は、ご存知の方も多いでしょう。はたして、この『住宅ローン控除』本当にそんなに“お得”な制度なのでしょうか。今回はこの『住宅ローン控除』について考えてみましょう。
現在(平成24年)の一般的な住宅ローン控除は、返済期間10年以上のローンを組んでマイホームを購入した場合、ローンの年末残高の最大1%の税金が10年間還付されるというものです。
一般的な住宅の場合、ローンの年末残高の上限は3000万円です。その1%ですので最大で1年に30万円、10年で300万円の還付になります。
しかし、これはあくまで最大の枠を使った場合の話であることに注意が必要です。
年30万円の枠を使い切るにはまず、所得税と住民税を合計で30万円以上納めていることが前提です。扶養の人数や生命保険料等の各種控除額によってバラつきはありますが、ざっと年収で600万円~650万円以上の世帯に絞られてしまいます。
また、当たり前ですが、返済とともにローン残高は減ります。繰り返しになりますが、
一般的な住宅の場合、控除できる限度額は年末のローン残高3000万円を限度として、その1%です。
気が付いたでしょうか?
そう、300万円還付を受けるには10年の間、毎年所得税と住民税を合計で30万円以上納め、かつ毎年の年末ローン残高が3000万円なければならないのです。最大控除枠の300万円の還付を受けることが、いかに難しいことか分かります。
中には営業マンに、税金が戻るので「毎月のローン返済負担が実質的に減る」という試算を示され、還付額を返済計画に織り込んでしまう方もいらっしゃるようです。しかし、この試算は、向こう10年間、年齢と共に年収が上がり、納める税金も増えていくものと仮定している場合がほとんどです。この試算を基に返済計画を立てることが、いかに危険なことか、ご理解いただけると思います。還付額を見込んで借りる額を増やし、高価な家を買えば、固定資産税のなどの維持コストも膨らみ、住宅関連の支出が確実に家計を圧迫します。
事業者のように消費税を預って納める事のない個人消費者にとっては、消費税は支払って終わりです。もともと購入を予定している物についてはマイホームに限らず、消費税増税前に購入された方が支出を抑えることができます。しかし住宅ローン控除での還付額については前述のとおり、毎年の納税額(年収)やローン残高に左右され、また転勤などにより居住しなくなれば、基本的にその後の住宅ローン控除は使えなくなります。消費税増税に伴ってマイホーム購入を検討する際には、住宅ローン控除の還付はあくまで“おまけ”程度に考えていただくことをお勧めします。