税務調査を受け、修正申告を提出したことのある方は大勢いらっしゃると思います。
果たしてその修正申告、本当に提出して良かったのでしょうか。
申告書を提出した後に誤りが見つかった場合に、それを正す方法は3通りあります。
1つは皆さんご存知の「修正申告」です。
納める税金が少な過ぎた場合や還付される税金が多過ぎた場合に納税者自ら提出します。
2つめは「更正の請求」です。
これは納める税金が多過ぎた場合や還付される税金が少な過ぎた場合に、誤りの内容を記載した更正の請求書を税務署長に提出し、正しくすることを請求します。
ちなみに更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。
3つめは「更正」です。
税務署長は、提出された税務申告書に記載された課税標準や税額等が、税法などの規定に従って計算されていなかったり、税務調査した結果、申告内容と違っていたりしたときは、提出された申告書の課税標準や税額等を「更正」することができます。
税務調査で指摘事項があった場合、ほとんどの納税者は修正申告を提出します。
修正申告を出すということは、納税者が自らその誤りを認め、進んで申告内容を修正するということです。
不思議に思いませんか?調査で申告に誤りがあるのを調査官が発見したのであれば、なぜ税務署は先に挙げた3つめの「更正」をして、強権的に「○○円払いなさい」と命令を下さないのでしょうか。
それは後で面倒なことにならないようにするためです。
税務署が「更正」をして強制的に追徴税を課した場合において、納税者がその処分に不服がある時は異議申立てをすることができます。
そして納税者の主張が認められれば、課税処分が取り消されることもあります。
しかし、修正申告をした場合には「自分で納得して提出」しているため、異議申立てをすることができないのです。
つまり、税務署は納税者に後から文句を言わせないようにするために修正申告を提出させるのです。
税務調査で調査官が指摘する事項の中には、明らかに処理が間違っており、修正申告に応じざる得ないものもあれば、違法・合法の判断が非常に難しいものや、時として言いがかりとしか思えないようなものまであります。
調査官の中には税法をよく理解していない人がいるのも事実で、調査官の言う事が全て正しいとは全くもって限りません。
もちろん明らかに違法である処理に関しては修正申告に応じる必要がありますが、税務署の見解に納得がいかなければ修正申告を提出する必要はありません。
その際には「納得できませんので修正申告は出しません。もし違法であるというのならば更正してください。」と言えばいいのです。
税務当局は、その申告に誤りがあった時のみ是正することができ、「誤り」だということを証明するのは税務当局側の仕事です。つまり、よほどの自信がない限り税務当局も、更正をかけることはできないのです。言いがかり的な内容やグレーである内容を、税務当局側が黒であるというのならば、その証明を税務署にしてもらえばよいのです。
納得がいかないのにもかかわらず、ひとたび修正申告に応じてしまえば、後から何を言っても、決して覆ることはありません。
修正申告は提出しなければならないと思い込んでいる方が大勢いらっしゃいます。納得ができなければ、修正申告を“提出しない”という選択肢もあることを覚えておいてください。
しかし、明らかに申告内容が誤っていたり、不正があった場合に修正申告を出さずにいれば、その期間が長くなるほどに加算税や延滞税が増えていくことになります。
修正申告に応じないのは、あくまで税務当局の見解に納得がいかない時だけにしましょう。