請求書ひとつで

『○×修繕工事一式 150万円』
『△◎支援コンサルティング料 300万円』
『☆★制作費 60万円』
「当然、全額経費でしょう!」
皆様はそうお考えかもしれません。
しかし、税理士がこのような請求書を見ると・・・。
「これじゃ内容が分からないよ。とりあえず、○年間に渡って費用にしよう」
と、本来全額経費が可能なものも、その請求明細の曖昧さから保守的に処理してしまう事があります。
もちろん、内容すら確認しないまま全額経費として処理してしまい、税務調査時に問題になる事も少なくありません。
「社長、これは全額経費にならないものでした。修正申告が必要です・・・」
この時点で、経営者の方が駆け込むように当社にご相談に来られ、
「税理士が税務署寄りなんです!」
と訴えます。
また、最近顧問契約をさせていただいたお客様でこんな事がありました。
「社長、この保証金というのが長年資産計上されていましたが、返金されないものなので経費処理出来ます。そもそも保証金ではありませんので。これをきちんと処理していれば今までに税金が100万円減っていました」
経費処理出来るものを処理せず、処理出来ないものを処理してしまう・・・。
経費処理出来るか出来ないかはちょっと調べれば分かることですし、分からなければその支払先へ直接問い合わせるのが当然です。
それすら行わない職務怠慢な税理士が悪いのは間違いありません。
従って、比較的金額が大きいものや、抽象性が高い支払いを検討している場合、事前に税理士に問い合わせを行う癖を身につける事が大事です。
事前に相談すれば流石に調べますから。
事前に相談してもおかしな事を言うようであれば、当社にご相談ください(笑)
と同時に、支払先にもっと明確な請求書を出していただく事も大事です。
100万も200万円も支払うのに、明細一行の請求書って・・・。
「これじゃ、税理士さんが処理出来ないって言っています」
これくらいは支払先に求めてもいいのではないでしょうか。
一概には言えませんが、内訳明細が細かいほど経費に落とせる割合が高くなる傾向があります。
例えば、100万円を支払うにしても、明細一行だと全額資産計上しがちなのが(してしまう税理士が悪いのですが・・・)、内訳明細が詳細に分かれていれば、50万円が経費処理出来て、50万円が資産計上になるという事は少なくありません。
また、契約期間がいたずらに長い場合も気をつけなければなりません。
例えば、支払ってから本来3ヶ月の契約期間で終わってしまう内容であるにもかかわらず、相手先が念のために5ヶ月の契約期間を取ってきたとします。
この期間が決算月をまたぐような場合、またいだ後の残りの期間分は経費処理出来ません。
そもそも、それが納品を伴う支払いの場合、納品が終わるまで全額経費に落とせません。
このように、期間が設定されている支払いは、決算日までに取引が終わるように設定していただくのがポイントです。
その発注の担当者が経営者や経理担当者とは限らないので、関係する社員にもこのようなポイントは事前に伝えておく必要があります。
「全額経費にならないなら、あえて今やらなかったのに・・・」
「税理士が言ってくれたら、詳細な内訳が記載されている請求書をもらったのに・・・」
最近、このような相談が多く、我々も曖昧な内容の請求書を多く目にします。
より多くの支払い額を経費処理するためには、正確な情報が必要であるとともに、経費処理する上での要件を充たした取引を行わなければなりません。
当然、そのような請求書を自社で発行していないかも確認するべきでしょう。
「あの会社へ100万円も払ったのに、経費に落ちなかった・・・」
と、変に恨まれても困りますから。。。

ホントに目立たない消費税の改正がありましたのでご注意を。

昨年末に公表された税制改正、近年あまり見なかったような、ド派手なコンテンツになっており、トップ(特に官房長官)の影響からか、ちょっと赤みを帯びて見えます。
再分配、再分配、再分配、再分配、再分配、再分配・・・。
(まぁ、政治主導の真逆をつき進んでいるわけですから、影響力なんて気のせいなのでしょうが・・・)
今回の改正は、唯一の減税策である『法人税率の引き下げ』の穴埋めのために、他の税目、特に個人関係での増税策が並びました。
「法人税が高い、高い、と経済界がうるさいから、日本国民の皆さま(特にお金持ちの方々)『ご協力』をお願いします。」が今回のコンセプトです。
そして、この『ご協力』は来年以降、大多数の日本国民の皆さまへと移行していくことになるでしょう。
さて、しばらく巷の話題から遠ざかっている感のある、消費税率アップについてはどうだったのでしょうか?
「社会保障制度の抜本改革と併せて、早急に検討を行ってまいります。」
と、何度も聞いたような記述はありましたが、具体的な話はうたわれませんでした。
今の民主党政権で、消費税率アップを掲げようものなら、即座に吹っ飛ぶことになるでしょうから、当然と言えば当然です。
(ここでは、マニフェスト通り、政治主導を存分に発揮したわけです。)
しかし、消費税について何もなかったわけではありません。
ここで、タイトルに帰還するわけです。
「ホントに目立たない消費税の改正がありましたのでご注意を。」
事業者が、消費税を納める義務があるか、ないか、は前々年度の売上高(※)が1千万円を超えているかどうか、で判断されます。
(※消費税法上の課税売上高ということになりますが、今回は簡易的に売上高とします)
つまり、開業して1年目、2年目は、そもそも前々年自体が存在しないわけですから、売上高がどのくらいあろうと、消費税を納める義務はありません。
(法人であれば、資本金1,000万円未満のケースに限ります)
しかし、今回の改正で話が変わってきたのです。
判断材料とされるのが前々年だけではなく、
『前年の上期半年で、売上高が1,000万円を超えている事業者については、消費税の納税義務を課す。』
ということになったのです。
0からスタートした開業の場合、例えどれほど精巧に経営計画を立てていたとしても、なかなか思い通りには行かず、売上げが伸び悩むこともあるでしょう。
その場合には、前年の上期で1,000万円超の売上高があるかないかという話は、さほど問題ではないのかもしれません。
しかし、『法人成り』であれば話は別です。
個人事業として開業したが、経営も軌道に乗ってきたので、そろそろ法人組織にしようか。これが、いわゆる『法人成り』です。
従来の制度であれば、法人成りした1年目・2年目は、法人としての前々年が存在しないため、丸々2年間は、消費税の納税義務がありませんでした。
しかし、今回の改正により、(法人成り1年目は、前年が存在しないため、従来と変わらず納税義務はないのですが、)2年目は前年の上期半年の売上高で判定されますので、もしもその売上高が1,000万円を超えていれば、消費税を納めなければならなくなってしまいます。
例えば、売上高1億円で、半分くらいが課税仕入で飛ばせるような業態だった場合、年間の消費税は250万円です。
売上高1億円の会社にとって、キャッシュアウトで250万円のウェイトはかなり大きいです。
この改正は、平成24年10月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
つまり、法人成り2年目を、平成24年10月1日前に設定することで、今までどおり2年間の消費税免除を受けることができます。
具体的には、法人成りを平成23年9月に行い、平成23年9月~平成24年8月を第1期、平成24年9月~平成25年8月を第2期、と設定することがベストの選択です。
あくまでも現時点では大綱レベル(見込み)のため、実際に法施行がされる4月くらいから法人成りシミュレーションを組むことになり、また、今回の改正による給与所得控除の制限など、判断要素が増えたことで、より緻密なシミュレーションが要求されます。
今回の消費税の話は、他の改正項目があまりにも眩しすぎて、道端に落ちている石ころ程度にしか感じないかもしれませんが、関係のある方々にとって見れば、とても大きなものであり、その石ころにつまずいたら大怪我をします。
長年、法人成りについて気になっていたが、“重要だけど緊急ではない”事項として位置づけてきた個人事業者の方々、ついに、決断をするその時がきたのかもしれません。
お金持ちの方々の『ご協力』のおかげで法人税率も下がることですし。

いろいろなものの賞味期限が終わり始めた

中学受験で、子どもを有名中学に
入学させて、そのまま大学まで
トコロテン・・という方法は、
都内に暮らす中流以上の家庭が考える
有効な戦略だった。
しかし、今、この戦略で
早稲田大学系の中学校に入学し
早稲田大学に入ると
就職がどうなるかはわからない。
ここのところの就職難で明らかになってきた
事実の一つは、
卒業生が1000人以上、いわゆるマンモス大学
の卒業生の就職率が落ちてきていることである。
小粒の大学では、
就職サポートも充実しているが、
大きな大学では、サポートを享受できない
学生が多く出てしまうらしい。
もちろん、
早稲田大学の中にも
就職率の良い学部はあるし
この有名中学入学コースをたどって
別の大学に入る手もある。
また、小さい大学だから、
良いというわけでもない。
しかし、
今まで王道だった戦略の
賞味期限は終わったと見てよい。
相続対策という言葉がある。
どうやって財産を守るかの戦略が
この相続対策になる。
そして、相続対策における
目玉商品的な対策の
賞味期限も一昨年に終わりを告げられた。
そして、
昨年の税制改正大綱で、
さらに、土俵際に追い詰められてしまった感がある。
昨年は、出てこなかったが、
国税庁には、相続税の抜本改正のアイデアもあるので、
今後も追い詰められていく可能性は高い。
ぶっちゃけ、相続対策全般の賞味期限も
終わってしまうかもしれないのだ。
そして・・・・・・・・。
・・と、あらゆる対策、戦略の賞味期限が
終わりを告げようとしている
時代が変われば、政策も変わり、
私たちの対応策もかわる。
当たり前のことである。
その対応策の変更が目白押しだ。
私たちの頭は、
自分でも情けないくらい固くできていて、
賞味期限切れのものにこだわりたい気持ちもあるけれど、
ここは、一度、全てをゼロにして組み立て直しの時期である。
いろいろな意味で、難しい時代に入った・・。