ホントに目立たない消費税の改正がありましたのでご注意を。

昨年末に公表された税制改正、近年あまり見なかったような、ド派手なコンテンツになっており、トップ(特に官房長官)の影響からか、ちょっと赤みを帯びて見えます。
再分配、再分配、再分配、再分配、再分配、再分配・・・。
(まぁ、政治主導の真逆をつき進んでいるわけですから、影響力なんて気のせいなのでしょうが・・・)
今回の改正は、唯一の減税策である『法人税率の引き下げ』の穴埋めのために、他の税目、特に個人関係での増税策が並びました。
「法人税が高い、高い、と経済界がうるさいから、日本国民の皆さま(特にお金持ちの方々)『ご協力』をお願いします。」が今回のコンセプトです。
そして、この『ご協力』は来年以降、大多数の日本国民の皆さまへと移行していくことになるでしょう。
さて、しばらく巷の話題から遠ざかっている感のある、消費税率アップについてはどうだったのでしょうか?
「社会保障制度の抜本改革と併せて、早急に検討を行ってまいります。」
と、何度も聞いたような記述はありましたが、具体的な話はうたわれませんでした。
今の民主党政権で、消費税率アップを掲げようものなら、即座に吹っ飛ぶことになるでしょうから、当然と言えば当然です。
(ここでは、マニフェスト通り、政治主導を存分に発揮したわけです。)
しかし、消費税について何もなかったわけではありません。
ここで、タイトルに帰還するわけです。
「ホントに目立たない消費税の改正がありましたのでご注意を。」
事業者が、消費税を納める義務があるか、ないか、は前々年度の売上高(※)が1千万円を超えているかどうか、で判断されます。
(※消費税法上の課税売上高ということになりますが、今回は簡易的に売上高とします)
つまり、開業して1年目、2年目は、そもそも前々年自体が存在しないわけですから、売上高がどのくらいあろうと、消費税を納める義務はありません。
(法人であれば、資本金1,000万円未満のケースに限ります)
しかし、今回の改正で話が変わってきたのです。
判断材料とされるのが前々年だけではなく、
『前年の上期半年で、売上高が1,000万円を超えている事業者については、消費税の納税義務を課す。』
ということになったのです。
0からスタートした開業の場合、例えどれほど精巧に経営計画を立てていたとしても、なかなか思い通りには行かず、売上げが伸び悩むこともあるでしょう。
その場合には、前年の上期で1,000万円超の売上高があるかないかという話は、さほど問題ではないのかもしれません。
しかし、『法人成り』であれば話は別です。
個人事業として開業したが、経営も軌道に乗ってきたので、そろそろ法人組織にしようか。これが、いわゆる『法人成り』です。
従来の制度であれば、法人成りした1年目・2年目は、法人としての前々年が存在しないため、丸々2年間は、消費税の納税義務がありませんでした。
しかし、今回の改正により、(法人成り1年目は、前年が存在しないため、従来と変わらず納税義務はないのですが、)2年目は前年の上期半年の売上高で判定されますので、もしもその売上高が1,000万円を超えていれば、消費税を納めなければならなくなってしまいます。
例えば、売上高1億円で、半分くらいが課税仕入で飛ばせるような業態だった場合、年間の消費税は250万円です。
売上高1億円の会社にとって、キャッシュアウトで250万円のウェイトはかなり大きいです。
この改正は、平成24年10月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
つまり、法人成り2年目を、平成24年10月1日前に設定することで、今までどおり2年間の消費税免除を受けることができます。
具体的には、法人成りを平成23年9月に行い、平成23年9月~平成24年8月を第1期、平成24年9月~平成25年8月を第2期、と設定することがベストの選択です。
あくまでも現時点では大綱レベル(見込み)のため、実際に法施行がされる4月くらいから法人成りシミュレーションを組むことになり、また、今回の改正による給与所得控除の制限など、判断要素が増えたことで、より緻密なシミュレーションが要求されます。
今回の消費税の話は、他の改正項目があまりにも眩しすぎて、道端に落ちている石ころ程度にしか感じないかもしれませんが、関係のある方々にとって見れば、とても大きなものであり、その石ころにつまずいたら大怪我をします。
長年、法人成りについて気になっていたが、“重要だけど緊急ではない”事項として位置づけてきた個人事業者の方々、ついに、決断をするその時がきたのかもしれません。
お金持ちの方々の『ご協力』のおかげで法人税率も下がることですし。