またまた潰れてしまいました。
英会話学校が・・・。
一昨年の最大手NOVAに続いて、これまた大手のジオスです。
「もう、英会話学校にお金を払わない!」
という方が続出しても、おかしくはありません。
そして、英会話学校に限らず、前受金ビジネスを展開している中小企業の皆様にとっては他人事ではありません。
「倒産が怖いので、解約します! 返金してください!」
このように言われたとき、即座に対応出来ますか?
英会話学校の場合、NOVAの件の後は解約による返金を受け付けているようです。
しかし、ある大手予備校のWEBサイトを確認したら、通常解約による返金は不可能との事でした。
これは、前受金ビジネスについて統一的なルールがある訳ではなく、業界や企業毎に対応が異なっているから当然です。
ここで、英会話学校を取り巻く現在の状況から、きっと誰もが“あそこは大丈夫か?”と思うであろう、大手校のイーオンについても調べたくなりました。
ちなみに、イーオンは上場企業ではないので、財務諸表は公開されていません。
そうしましたところ、WEBサイトに【安心して学べる英会話学校】とうたって、下記内容が掲載されていました。
ちょっと長いので、段落を分けつつ転載します。
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通常、多くの英会話学校は、大学や専門学校と同じように生徒様から授業料を前納していただくことで、クラス編成や教師配置の計画性を高め、学校運営を安定させていく経営方法を取っています。
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真っ先に、お金を前納してもらう理由を掲げています。
確かに、計画性が保てないビジネスは相対的に経営リスクが高いのは間違いありません。
間接的にですが、前納してもらう事によってサービス料金を低く抑えていると言いたいのだと考えます。
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イーオングループ会社も一部のコースを除き授業料は前納制ですが、その前納された授業料のうち、未経過分(前受金)の50%を 通常の運営資金から切り離し保全するために、みずほ信託銀行株式会社との間で分別信託制度を導入しています。
在籍している全生徒様と、今後新たに入学や更新をされる全生徒様の入学金、授業料、システム管理費の未経過分が対象となるこの「前受金分別信託制度」は、授業料等の支払いにまつわる生徒様の不安や疑問を解消し、安心して受講していただくためのものです。
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この分別信託制度を簡単に説明すると、お客様に返金する可能性があるお金を通常の運転資金とは分けて、信託銀行に別口で預けるという事です。
つまり、まだもらう権利がないお金は使えないようになっているのです。
NOVA の場合、分別信託制度を取ってはおらず、預かっているお金のほとんどを運営資金に使っていたため、お客様に返金する事は出来ませんでした。
ちなみに、保険会社に支払っている、積み立て型の保険料も同じような仕組みです。
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過去において業界の大手校が経営破綻した時、多くの受講者が前払いした授業料が返還されないという事態が生じました。未経過授業料の50%を信託保全することにより、将来的に万一弊社グループ会社の事業が継続困難になった時でも、この保全額相当分は確実に生徒様全員に返還保証されることになります。
さらに、分別管理後におきましても、保有する手元流動性資金(現金、預金、有価証券等)で、前受金の全額を十分まかなうことが可能です。弊社グループ会社はかねてから業界内では良好な財務体質を誇っております。
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イーオンが倒産する事になっても、未経過分の50%は確実に返金出来ますと伝えています。
また、残りの50%も、十分に返金出来る程の資金力があるので安心してください、とアピールしています。
以上、イーオンの財務諸表を確認する事が出来ないので真偽は分かりませんが、大抵の人はある程度納得するでしょう。
いかがでしょう?
イーオンの手法はあくまで選択肢の一つです。
しかし、このように会社の方針を明確にアピール出来れば、お客様から不安の声が上がった時に、現場スタッフでも速やかに説明出来ます。
当然、イーオンも“NOVA&ジオス”ショックでダメージを受けているでしょうから、厳しい経営環境には変わりません。
ただ、上記のような“抑止力”としての手段は講じています。
そして、NOVAから事業を引き継いだジー・コミュニケーションも、支払方法に月謝制を導入し、お客様の不安を取り除こうと懸命です。
月謝制は、お客様にとって前納よりも単価は高くなりますが、倒産によるリスクはグッと下がります。
思い起こせば、子供の頃に通っていた書道教室やそろばん教室は月謝制だったはず。
それがいつの間にか、サービスの多様性とともに月謝制よりも前納が主流になり、その分料金も下がりました。
これから当分の間は、もっと倒産企業が増える事が予想されます。
その度にお客様はビクビクし、企業側もビクビクします。
前納なり、月謝なり、財務諸表の公開なり、分別管理なり etc.
お客様に、選択肢と明確な説明を与える事が出来る企業が、生存の可能性を高めます。
今まで通りのビジネスモデルが通用するのは、今日までかもしれません。
他社の倒産劇から学ぶべき点はたくさんあります。
単なるニュースで終わらさず、その都度立ち止まって考える事をお勧めします。
月: 2013年2月
投資の世界と経営
当社では、“なっちゃって・シリーズ”という専門家を少々愚弄するかもしれない「セミナー」を時々行っています。
そして、今年の“なんちゃって”は、『投資』について行いました。
題して、『なんちゃって投資セミナー』
ファンドマネージャーでもない私が、
投資について“なんちゃって”する。
そして、“投資”の知識を経営に活かすというのがテーマでした。
大学時代から株で運用を行い、
(今では、普通のことでしょうが、1980年代に大学生が株をやっているというのは、かなり異様なことでした)
社会に出てからは、国債のディーリングの黎明期に現場での経験をしてはいますが、今のような複雑化している投資の世界では、素人も素人。
イッタイゼンタイナニヲハナスノ・・という感じです。
しかし、専門家では見えないものが、門外漢からは見えたりするのが面白いところ。
特に“投資”の世界は、経営の世界での応用余地がたくさんあります。
そもそも、投資の世界における常識の一つである、
多くの無知な生け贄の存在があって、一部の勝ち組が良い思いをする構造は、経営の世界でも同様でしょう。
多くの無知な生け贄が、最もやられてしまうのは、
“新市場”とか“新技術”という言葉が踊る時と決まっています。
私は、新しいものに振り回されることを
「サンバを踊る」と言っていますが、
今も多くの人たちが“新しい”に引っ張られて、
サンバを踊っています。
しかし、実際に長く儲かっているのは、
地味な会社と決まっています。
財務的には、保守的で、
新しいことをやりたがらない。
むしろ、コアにこだわる。
そういう会社は、“投資”的にも、
おいしいことが多いのですが、
地味なために、注目はされないのが相場です。
しかし、この“当たり前”のことが
わかっていても、
私たちは、新しいものに振り回されます。
地味なことに飽きるからか、
得体の知れない恐怖心からか
何かにすがるような行動を取ってしまいます。
また、
相場の動きをフラクタルと考えたマンデルブロの研究なども
実務で応用できる知恵だと思います。
彼の研究の一つに、
事象の長期記憶についての研究があります。
正直、理系の人でないと難しくて理解に苦しむものですが、
それを、私たちの実務経験を踏まえて読み解いてみると、
とても面白い発見があります。
投資の勉強をちゃんとしておけば、
騙されることもなくなりますし、
いくらかは損をする機会は減るはずです。
したがって、本来は、
絶対に学習しておくべき知識でしょう。
しかし、経営者が、
投資の世界について基礎から知ろうとすることは
普通ありません。
でも、経営と関連づけて学んでみると、
“投資”という世界から離れた面白さがあります。
無知な生け贄にならずにすむだけでなく、
経営に活かすこともできるのですから、
ぜひ、基本的なところから紐解いていくことをお勧めします。
会計やマーケティング、戦略、組織・・などの
カテゴリーだけが経営の重点項目ではありません。