もちろん、法人の税務調査のお話。
国税庁から、平成21年度の法人税等の調査実績が公表されました。
過去20年間で、二番目に多い申告もれ所得金額です。
その額は、なんと2兆493億円!
平成20年度の申告もれ所得金額は、1兆3,255億円と過去20年間で最低でした。
これはサブプライム問題から端を発したリーマンショック前後までの期間と重なるので、当然と言えば当然かもしれません。
ちなみに、平成21年度の調査件数は、前年よりも4.5%低い13万9千件(法人数全体の約5.3%)。
これは、国税庁の下記アナウンスから意図が読み取れます。
「平成21事務年度における法人税等の調査については、大口・悪質な不正計算が想定される事案に加え、社会・経済情勢の変化を踏まえつつ、無申告法人、海外取引法人、公益法人等をはじめとする波及効果の高い事案に取り組みました」
“取れるところから取る!”
国税庁は選択と集中により、効率の良い調査を行ったという事になります。
そして、気になる点は、法人全体の申告所得もれの対前年増加額が7,238億円であるのに対し、資本金1億円以上の法人(以下、「大企業」)の申告所得もれの対前年増加額は7,555億円だったという事です。
つまり、資本金1億円未満の法人(以下、「中小企業」)の調査においては、過去最低であった平成20年度よりも、更に申告もれ所得金額が減少しました。
また、平成21年度の赤字企業の割合は74.5%で、平成20年度の71%(平成19年度67%)より悪化しています。
という事は、中小企業の調査でも・・・
“取れるところから取る!”
という事になります。
当然、企業努力により黒字を確保している中小企業は、税務調査の頻度が多くなるのは間違いありません。
「ご注意ください!」
というのもおかしな話ですが、
実際、セカンドオピニオンで、黒字企業の税務調査でのご相談が非常に増えています。
税務調査一発でガタつく企業も意外と多く、その後に税理士と仲違いされます。
「何もやましい事はない!」
という経営者の方でも、“税務調査”と聞くと、一瞬ギクッとなるのは人の理・・・。
しかも、税理士による確認もれや判断ミスは、企業側ではどうにもなりません。
これは、近年、企業取引が非常に複雑化しているにもかかわらず、年配の税理士や経験が浅い税理士が、企業の動きについて行けないという事を意味しています。
セカンドオピニオンでご相談が多いのも、このような税理士が顧問の企業様です。
とはいえ、税務調査を怖がる必要は一切ありません。
また、怖がるよりも積極的に税務上の守りを固めてください。
積極的にというのは、保守的な税理士が好きな“無難すぎる”守りではなく、税制上の制度を使い倒して、無駄な税金を払わなくするという事です。
増税に、減税・・・。
廃止された税制に、新しく始まる税制・・・。
グループ法人税制という、関連会社がある企業は見逃せない制度も始まりました。
民主党政権になって、企業を取り巻く税制も大混乱する気配が漂いますが、この大混乱に巻き込まれてしまっては、無駄なエネルギーを使わせられるだけ。
一部の業界では景気の回復傾向も見られますが、補助金を含め税制上の恩恵が消えた瞬間に流れは変わるかもしれません。
さあ、今年よりも更に荒れそうな平成23年度の開始は目の前に来ています。
攻めも守りもスタートダッシュが成功するかは、年末年始の一番頭が切り替わる時期の判断に掛っているのではないでしょうか。
体は休めても、頭はフル回転の年末年始を迎えましょう。