ダイヤモンド社から2011年9月に出版した本は、久しぶりに会計の本です。
この本では、最後の章で、小さな架空の物語を書きました。
会計を知らない家族が、ビジネスをはじめ、ライバルの出現と共に会計に翻弄されていくお話です。
この架空の物語で、何を明らかにしようとしたかを一言で言えば、経営には、思想が必要だということかもしれません。
そして、経営に必要な思想はいろいろあるけれど、会計も思想であると言いたかったように思います。
実際、この本の第二章では、思想としての会計をテーマにしています。
そして、次のような文章ではじめています。
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第二章は、一般的な会計の本の文脈から考えると少し特殊なトーンが
あるもしれません。
なぜならば、これから「会計」という道具を使う「思想」について考えて
いこうとしているからです。
そして、会計を利用するひとつの「思想」から会計とは何かを明らかに
してみようと思います。
会計の思想を語るというのは少し生意気かもしれません。ここで言う
「思想」は会計専門の学者や官僚が法律などを策定するときに拠り
どころとするようなものではありません。
中小企業経営者が、会計という道具を利用する際に必要な「思想」です。
「思想」などと大上段に構えることなく、単に「アイデア」と言い切ることも
できないこともありませんが、あくまでも「アイデア」とは違います。
ひとつの「思想」というものは、誰もが受け入れられるものではありません。
また、思考に飛躍がある可能性もあります。しかし、現在の中小企業の
会計に足りないものは「思想」だと思うのです。「思想」がないために、
混乱しているのです。
企業経営を上手に運営している経営者には、思想があります。通常、
そうした経営者の経営における思想は巷間に多く流布していますが、
彼らには会計に対しても思想があります。そうしたことを明らかにし
ながら、目指すべき会計=思想を考えていきます。
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この考えは大きな分岐点になります。
会計を単なる技術と考えている限り、会計は武器になることはありません。
もちろん、多少はなるでしょうが、限界があるのです。
会計の専門家が、時折、おかしなアドバイスをしてしまうのは、彼らが教科書通りのことをするからです。
つまり、技術としての会計に焦点を当ててしまうところに、失敗があります。
しかし、会計を思想と考えてみると、まったく違う世界が現れます。そして、いろいろな数値管理の手法が浮かんできます。
経営に占める会計の役割は数パーセントとおっしゃる方もいますが、それは大きく間違っています。
そういう方は、単なる技術としての会計について言っている。つまり、会計が何かをわかっていないのです。おそらく、会計は分析レベルのものと思っているのです。
しかし、思想としての会計を考えるならば、その位置づけは、40%以上は占める重要なものに変わってきます。
思想としての会計を考える時、別に私の新著を読んでいただく必要はありません。
自分は、どういう数字にしたいのか・・が明確ならば、それはもう思想です。
それを単なる希望とか目標と思うからいけないのです。
ちょっとした言葉の違いですが、このちょっとした言葉の違いはとても大きいと思います。