なぜ税理士は決算書の数字を変えてしまうのか?

先日、ある社長さんより質問をいただきました。
「笹川さん、うちの税理士さんに申告をお願いすると
黒字だった決算書が、赤字になって出てくるんです
けど何ででしょうか?」
これはよくある質問です。
とくに近年では会計ソフトを使って、自社で
決算書を作成している会社が増えたために、この
ようなケースも増えています。
では税理士が間違ったのでしょうか?
そのようなケースも無いことはないでしょうが
ほとんどの場合、期中に正しい経理処理が行われて
いなかったことが原因です。
例えば次のようなケースです。
・減価償却費の計上不足
・売上の重複計上
・買掛金の計上漏れ
まだまだ、あげればきりがありません。
税理士は申告を依頼された場合、まず最初に
やることは、皆さんが作って来た決算書を
『税金を正しく計算するための決算書』に作り
変える作業です。
そのうえで、作り変えた決算書を元に、
税務署に提出する申告書を作成するのです。
何故、税理士は皆さんの決算書を作り変えてしまう
のでしょうか?
理由は申告書を作成するのに楽だからです。
税務署では皆さんが作った決算書では正しく税金
が計算できないことは承知しています。
そこで、皆さんの決算書の利益を、税金を計算する
ための利益に調整するための計算書を用意しています。
ところが税理士は調整しなければいけない数字が
多くなると計算が複雑になるため、皆さんが作った
決算書を直接直してしまうのです。
これが、『税理士が決算書の数字を変えてしまう理由』
です。
それでは、皆さんが作った決算書の数字を変えないで
税理士に申告書を作成してもらうにはどのように
すればいいのでしょうか?
その方法は、次のように税理士にお願いすることです。
「この決算は株主総会で承認された決算です。」
「この決算書の数字は変えないで申告書を作成してください。」
何故これで決算書を変えることができなくなるのか?
それは、会社が申告する法人税について『確定決算主義』
という決まりをを前提としているためです。
これは、会社は税務署に、『株主総会で承認された決算の
利益を基礎に、税法の規定による調整を加えて作成した
申告書を提出しなければならない』ことを規程しているもの
です。
そのため税理士は決算書の数字を勝手に変えることは
できなくなります。
しかし、これには注意が必要です。
減価償却費や引当金の計上等、決算書上費用として経理
されていなければ税金の計算において調整することができない
ものもありますのでご注意ください。
もうひとつ方法があります。
それは『自主申告』です。
この国の納税制度は自主申告を前提としています。
会計ソフトの普及によって申告書まで作成できる
『税理士いらず』という刺激的なタイトルのソフトも
登場しています
ホント税理士泣かせです(笑)
しかし、どんなにソフトが便利になっても申告書の
作成は専門家の領域です。
申告書の作成は専門家からみても複雑です。
素人がやれば必ずミスはあります。
だからこそ税務調査という税務署による指導の機会
があるのです。
ミスがあれば税務署が正しい計算を教えてくれます。
そのときは指導に従って直してください。
その際には過少申告加算税という罰金がつくことも
ありますのでご注意ください。
その指導に疑問があれば税理士に相談してください。
税務署の処分に不満があれば不服申し立てを行うこと
もできます。
納税者による自主申告の流れは徐々に来ています。
私はこういう流れは嫌いではありません。
ただし、自己申告をするということは税金だけの
問題では済まない場合もあります。