【税務調査】と【お土産?】

「お土産、渡すのですよね?」
先月、新規営業で4社のお客様とお会いしました。
その際、そのお客様の過去の税務調査や、当事務所が立ち会ったケースが話題になる訳です。
そして、驚いた事に、お会いした方々は、揃って冒頭の言葉をおっしゃいました。
過去に何度も厳しい税務調査を受けて来られ、実際にお土産も経験したベテラン経営者の口から出る言葉なら分かります。
しかし、お会いした方々は、若手の経営者でした。
さらに、税務調査を経験されていない方もいらっしゃいます。
いまだに、このような話が一般論として語られているのか、と考え込んでしまいました。
ちなみに、「お土産」とは、税務調査を早く終わらせる事等を目的に、安易に妥協して指摘事項を受け入れる事を言います。
場合によっては自ら差し出すケースもあるとか。
「お土産」をご存知の方も多いと思いますが、既に死語だと考えています。
少なくとも当事務所では・・・。
もちろん、悪質な税務調査の例は耳にタコが出来るほど聞いています。
当事務所の税務調査の立ち会いでそんな事があったら、あらゆる手段を講じるとは思いますが(笑)
とはいえ、最近の税務調査官で、悪質な方は少ないのではないでしょうか?
私の経験上でも、調査官の対応は非常に丁寧で、常識的でした。
今の時代、悪質な調査官の言動をビデオ録画でもされて、ユーチューブで流されたりしたら、大変な騒ぎになりますよね。
税務調査ではまだ聞いた事がありませんが・・・。
そして、タイミングが良いのか悪いのか、新規営業を挟んで、私が担当するお客様で税務調査がありました。
「こんな劇的な結末が!」
というようなお話であれば、皆さんにお伝えできるのですが・・・。
おかげさまで、修正もなく、無事終了です。
もちろん、調査官も私も、お土産の影すらチラつかせずに。
そして、当事務所の過去の税務調査もほとんど同じです。
税務調査について誤解されている方も多いでしょうから、この際、きちんとお伝えしておきます。
「お土産など、必要ありません」
何もなければ、修正もなく終わり。
処理ミスや違法行為があれば、適正に修正して終わり。
ただ、それだけです。
ですから、企業は、日頃から正確な処理、必要な書類の整備等をしておけばよいのです。
調査官も、資料を見れば分かります。
この企業は問題なさそうだと思えば、調査はすぐに終了します。
調査官にも調査件数のノルマがあるので、問題がない企業に時間をかけません。
お土産といった場合、税理士も当然に絡んでいるのですから、そんな話をする税理士にはきちんと「NO!」を言ってくださいね。
きっと、そんな税理士には調査官もあきれていますから。
誤解又は認識の違いがあると、本来必要のないコストが発生する場合があります。
それは税務調査に限らず、企業活動全般に言えます。
専門家に相談する場合も、相手が本当のプロではない場合、誤った認識を植えつけられる可能性があります。
自分の専門外の事には気をつけなければいけませんね。

税理士の作った決算書が間違っているそうです!?

つい先日、一人の社長さんが私のもとに相談に訪れました。
その社長さんの話では税理士が作った決算書が間違っているということでした・・・
そういえば少し前にも都銀の方から同じような質問受けたばかりでした。そのときは完全に税理士が間違っていました。
実は新会社法ができてから決算書の仕様もかわり、また、ここにきてリース会計基準の変更などもあって環境変化に対応できていない税理士が増えてきているのです。
その社長さんは建設業を営む中小企業の社長さんでした。
はじめに電話で話しを聞いたときには「税理士が作った決算書が間違っているので見てほしい」ということで、少し尋常ではありませんでした。
相談日の当日、果たしてあの社長さんの顧問税理士はどんな決算書をつくったのだろう?と考えながら待っていると、風呂敷にいっぱいの書類をもった社長さんがいらっしゃいました。
その、日焼けした顔つきは普段から現場作業に追われている社長さんの慌ただしい毎日を物語っていました。
テーブルについたところで
「決算書が間違っているということでしたが・・」
と私が聞くと、堰をきったように社長さんは話を始めました。
その社長さんの話をまとめると次のとおりです。
ある現場の工事について元請け会社からの入金が少なかったために交渉したところ追加で入金がありました。つまりこれは売上が増加したのだと社長さんは私に説明しています。
しかし、話を進めていくとその追加入金は元請け会社からの経費分の立替金であって返済しなければならないお金でした。その返済方法は今後の売上入金との相殺ということです。
これでは追加売上とはいえません。名目は何であれただの『借入金』です。
ところが社長さんにしてみれば通帳残高は増えているし、返済も通帳から引落されるものでもないため借入れをしたという実感がないのです。
私は丁寧に取引きの流れを図にして「売上とは何か」を説明させていただきました。最終的に、その社長さんは納得して帰られました。
通帳にお金はあるのに売上ではない・・理解しがたいのも無理はありません。
また、こんな話もありました。
それは私どもが税務顧問をさせていただいている会社の社長さんの話です。
その会社の社長さんは、私がつくった計算書などほとんど見ない社長さんです。
奥さんが経理をしていますが、パソコンで入力作業をしているだけで計算書の見方などほとんど知りません。
久し振りにその会社を訪れた私はパソコンの計算書を見てみました。
苦労の跡はみえますがまずまずの業績です。
「うん、調子良さそうだね!」
と声をかけると
「まぁまぁだね!」
と奥さんの明るい声。
「わかるの?計算書みた?」
と私が聞くと
「そんなもん見なくても通帳見てればわかるわよ!」。
そうです、これこそが商売の究極にしてもっともシンプルな業績の評価指標です。
そう聞いた私は奥さんの言葉に安心して会社を後にしました。
自分の会社が儲かっているかどうかわからないという社長さんのご質問をよくいただきますが、そのように質問される社長さんの会社はまず間違いなく儲かっていません。
こういった質問される社長の皆さんは、顧問税理士から「利益が出ています」と言われながら通帳の残高が増えていない方々ばかりです。
会計上のカラクリはありますが、通帳の残高が増えていないということは、儲かっていないのです。これが商いの世界での真実であることは今さら私がいうことではありません。
しかし、最初に登場してきた社長さんの通帳は増えているけど儲けではない・・これもまた真実です。
そこで中小企業にとって重要なのが『ROCA』。
これは企業が投下した資金に対してどれだけのキャッシュリターンがあったかということです。
ROAと一見似ていますがまったく異なるものです。
次回はこのROCAについてのお話をいたします。