モラトリアム。
最近のニュース等でご存じでしょうが、経済学用語で「支払猶予期間」の事です。
私は、心理学で使われる「先延ばし」や「回避」のニュアンスが浮かんでしまいます。
最終案では強制を伴うモラトリアム発動は見送られました。
ただ、返済猶予制度は中小企業の経営者にとって無視できないはずです。
元本のみならず、利息の返済も猶予され、その期間は3年。
それでは、3年後・・・中小企業の経営は楽になっているのでしょうか?
中小企業の多くは、借入金の額が年々増加しています。
当然ながら、返済額も比例します。
返すために借りる。
これは資金繰り上、当然の手当てです。
赤字企業が大多数と言われている現在、そもそも返済するお金すら足りないのですから。
このような状況の中、3年もの間、元本も利息も返済をしなくてもよいというのは非常に魅力的な法案です。
返済猶予を受けても、新規融資を止めさせないと言っていますので、ここまでされれば企業倒産のペースは減少するでしょう。
しかし、制度終了後、それでも好転しない企業に、金融機関は融資を続けるのでしょうか?
民主党は、ダムや道路など無駄な公共事業を削減し、その他も見直しを計っています。
当然、国家予算の消化の恩恵を受けてきた企業は、売上減少を余儀なくされます。
そして、自らの政策により経営が苦しくなる企業の返済を3年間猶予する。
3年後、公共事業を増やす事はないにもかかわらず・・・。
民間需要が激減しているこの時期に、長年公共事業で食べてきた企業が、短期間で民間中心に移行できるのでしょうか?
結局、このような企業の命を「先延ばし」しているだけなのです。
だから、結局はモラトリアム。
もちろん、ダムや道路など無駄な公共事業を進めるのが良いとは思いません。
ただ、それぞれの政策が、縮小均衡を招くだけのものとしか考えられないのです。
これは全ての中小企業に言える事です。
制度の利用が、企業と金融機関との合意を前提とする以上、事業再生計画なしに実施される事はあり得ないでしょう。
事業再生計画も描けない企業の返済を猶予しても意味がないからです。
例え政府の保証があるとしても、無制限に返済猶予を乱発する金融機関がどのような目で見られるか・・・。
セーフティネットとは明らかに質の異なる制度です。
つまり、まず行うべきは、実行可能な事業再生計画の検討です。
もし、その再生計画を実行するにあたって、返済猶予が有力な手段となるのであれば、それは積極的に利用すべきです。
ある意味、この制度は、中小企業救済の名のもとに、返済猶予終了後に生き残る企業を選別している気がします。
事業再生計画を描けるかどうかが踏み絵です。
正直、事業再生計画を作るのはつらい作業になるでしょう。
ただ、目の前の現実を見ない限り、いずれにしても企業の寿命は長くはありません。
当社も外部向けの経営計画セミナーを行っていますが、そこで初めて計画を立てられ、このままでは倒産すると危機感を持たれる企業もあります。
「先延ばし」法案を待って行動していては、とても間に合いません。
返済猶予が頭をよぎっている企業は、いますぐに行動すべきです。