米国LLCを使った節税手法に一つの判断が出ました。
米国LLCからの分配金は「配当所得」とされ、米国LLCは日本の私法上「法人」に該当することが相当とする判断が東京高裁において示されました。
米国LLCからの分配金が配当所得とされたことにより、損益通算を利用した節税法の利用ができなくなりました。
損益通算とは一方の事業で利益が出ており、他方の事業に損失が出ている場合、この二つの事業の利益と損失を±(プラスマイナス)して税金を少なくする方法です。
米国LLCは「check the box」という規則によって法人で税金を納めるか個人で税金を納めるか選択できるようになっています。
この制度を利用し海外のLLCへ投資をし、そこから生じた所得を使って損益通算を行う事例はほかにもあることから、今回の司法判断が投資家に与える影響は大きいといえます。
今回の裁判でポイントとなった点は次の3つです。
(1) 外国LLCは実質で判断
(2) check the box規則は判断基準にならない
(3) 国税庁はLLCを原則法人と判定
一方、日本版LLC(合同会社)は法人格を有するため法人課税が行われパススルー課税は採用できません。従って、法人が稼いだ儲けに対しては、法人税が課税されます。
更に会社から利益の分配を受けた出資者に対しても所得税が課税される、二重課税の構造となっています。
米国LLCのようにパススルー課税が適用され組織として、日本においてはLLP(有限責任事業組合)があります。
ところが、LLPの損失を取り込み損益通算だけに利用する租税回避行為が予想されることから、それを防ぐために全構成員が業務執行に携わることが要求されています。
LLPというと、とかく租税回避目的で利用される趣が強いように思われます。
その証拠に、「組合契約は、不当に債務を免れる目的でこれを濫用してはならない」(LLP法3-3)と条文上に制度の濫用防止規定がもりこまれています。これはとても珍しいことです。
私が普段、実務の現場において、ふと頭をよぎる思いがあります。
それは最近、経営者の中の一部に「仕事」に対する誠実な姿勢が薄れているということです。
自社の仕事について使命感をもち、社会的使命の実現にむかってひたむきに邁進する姿勢。いわば「仕事の品格」とでも言うべき姿が薄れているように思うのです。
とかく仕事がお金儲けの手段のように語られ、営業のテクニックやノウハウだけが語られることに、えもいわれぬ違和感を感じます。
このことは会社経営における税金に対する考え方についても言えることです。とかく税金を払うことを避ける傾向があります。
それ事態は当たり前のことです。少しでも納税を少なくしたいという気持ちは自然なことです。私もそれはあります。
しかし、問題なのは本来成すべき仕事のことを二の次にして節税対策に没頭する・・・これでは「節税にあわせた仕事」になってしまいます。
LLPやLLCが創設された本来の趣旨はパススルー課税ありきではないのです。
企業規模も立場の違うもの同士が、共通の理想に向かってそれぞれの強みを持ち合わせて共同事業を行うことを可能とする素晴らしい制度なのです。
私は、私どものお客様にとって価値ある仕事を成し遂げるために、「仕事の品格」をいつも忘れてはならないと心がけています。