先日、保険会社の営業担当が「こんな新商品が出たのですが、どこかニーズのある顧問先様はいらっしゃいませんか?」とセールスに来ました。
その商品、簡単に説明すると、ドルで契約時一括払いの満期時一括受取り。
つまり、契約時よりも満期時が円安になっていれば為替差益が発生し、プラス、確定利回りが保証されているというもの。
お金の固定期間から考えると確定利回りはかなり良いのですが、為替リスクを負っているのだから当たり前。
さらには、節税効果がゼロときたものですから、リッチな会社がお付き合いで加入するといったタイプのどうしようもない金融商品です。
「世間では円が強くなる、という見方が主流だと思いますが、どうなのでしょうね?」
よくこんな商品をセールスに来るなぁ・・・とは思いつつ、どのような返しが来るのか興味もあったので聞いてみました。
「はい、そういった意見はよくお聞きしますが、こちらをご覧ください。」
営業担当は補助資料を広げました。
「このように、過去のデータによれば、短期的には円が高騰しても、長い目で見れば持ち直しております。1995年と比べてみてください、むしろ2円下がっております。」とのこと。
営業担当は決してウソは言っていません。
これを見て、なるほど納得!と思われた方は加入してください 笑
ただ気を付けていただきたいことは、補助資料にはセールスに都合のいいようにバイアスがかかっているということです。
以下の図をご覧ください。過去20年間の為替相場の変動です。
長く区切って、20年前からの推移を見てみると、上がり下がりを繰り返しながらも徐々に円が強くなっていることがわかります。
この推移を見せたらセールスとしてはあまり都合が良くありません。
逆に、短く区切って、10年前からの推移を見てみると、18円も短期的に円が上がっているのですから、これもセールスとしてはあまり都合が良くありません。
つまり、円高になっている15年前付近からの推移にフォーカスするのが、セールスとしては最も都合が良いのです。
ついでにお話しをすると、営業担当がそれを知っていたのかどうか・・・、大変疑わしいところです。
つまり、社内の新商品研修の段階で、上からその説明を受けずに、都合の良いサンプルが適正サンプルだと思い込んでセールスしている可能性があるということです。
表面的にはなんの悪びれた様子も見て取れず、むしろ社会貢献意識全開でセールスしてきますから厄介です・・・。
このように、世の中には過剰一般化のバイアスがいたるところでかかっています。
世の中で何らかのサンプルデータを目の当たりにしたときは、そのサンプルの質・量という観点から、そのサンプルデータが適正かどうか疑ってかかることが重要です。
『80%の人から絶大な支持!』
その商品のファンを5人集めて、そのうち4人が支持すれば成立です。
『地域出玉No.1店舗!』
田舎のせまい町内であれば、1店舗しかない可能性だってあります。
誰もウソは言っていません、消費者がそれをどう受け止めるかどうかの問題です。
逆に考えれば、過剰一般化を意図的に使うこともできます。
セールスの場面や、社内のモチベーションアップのため等々・・・、うまい使い方をすれば、様々なケースで威力を発揮することでしょう。
しかしながら、節度を守らずに、あまりにも事実を誤認させるような使い方をすれば、当然ながらしっぺ返しがきますのでご注意を・・・。