一部のメディアが報道しているように、税理士業界も絡めた大型倒産が発生しました。
【帝国データバンク倒産情報より一部抜粋】
11月14日に債権者から東京地裁に破産を申し立てられた(株)信和総合リース(資本金3000万円、千代田区神田錦町3-15、代表庄子興氏、従業員3名)の負債額が判明した。
当社は2000年(平成12年)7月、京都市で(株)信和の商号で設立され、2001年4月に現商号に変更したノンバンク。全国の税理士事務所や会計士事務所と提携し、その事務所の顧客が節税や福利厚生目的の各種保険などを購入する際の資金の一部を融資する一方、外貨建て金融商品の紹介、不動産投資信託や私募債発行のアドバイスなども行い、2008年4月期の年収入高は約43億9700万円を計上していた。
しかし、今年9月に民事再生法を申請(その後、破産)した松本引越センター(株)(大阪)に対して約3億7200万円の焦げ付きが発生するなど不良債権が散発していたほか、不明朗な取引により会社から多額の資金が流出し、厳しい資金繰りを強いられていた。
今年9月25日に創業者が代表を辞任した後、その後1カ月余りの間で2度も代表が交代するなど経営が混乱、10月には現住所に本社を移転していた。さらに一部で不透明な保険契約等が行われていたと見られ、9月29日には当社債権約50億円が債権譲渡登記されていたことが判明するなど資金繰り悪化が表面化するなか、債権者から破産を申し立てられていた。
負債は、2008年4月期時点で、約199億7200万円。
一部のメディアでは、信和総合リースの不正な保険勧誘についても報道されており、今後、単なる倒産話では終わらず、不正が明らかになってくる可能性があります。
帝国データバンクの記事でも“不明朗な取引により会社から多額の資金が流出し・・・・”とあるように、いろいろな問題に発展しそうな感じです。
すでに、金融庁も調査に入っているので、これからいろいろな話が出てくるでしょう。
さて、この信和総合リースは、保険斡旋の窓口となる税理士にも多額の投資を募っていました。
また、付き合いのある税理士は、そうした投資を顧問先にも斡旋していました。
きっと顧問先の人たちは、自分の顧問税理士が自身もお金を入れている投資を勧めているわけですから、信用してお金を入れたことでしょう。
中小企業の相談相手と言えば、一番に税理士です。
中小企業の経営者は、税理士の専門分野でないことでも、身近にいるという利用でアレコレ相談をしているようですが、これは問題です。
税の専門家に、経営の相談や投資の相談をするなんて、本来はあり得ないことですが、この日本では、それがまかり通っています。
税理士の方でも、そういうことに無頓着のようで、どんな相談でも受けているのでしょうか?
私は、最近、あるパーティーで、年配の税理士に声をかけられ、「これからは、コンサルティングだね。私もあなたのようなビジネスの展開をしたいんだけど、教えてくれないか?」
と言われました。
私の回答は、冷たいものでした。
「税理士がコンサルをやるなんて、自殺行為ですよ。何の技術もないのに、実行したらお客様に迷惑をかけるだけです。お勧めできませんね。誤解があるようなので、確認しておきますが、私は、税理士がコンサルを始めたわけではなく、元々が経営アドバイザー的なことが得意で、後から税理士の資格をなんとなく取ってしまった者です。逆なので誤解のなきよう・・」
税理士というと、社会的な信用は今でも十分あると思いますが、それは先人達が税の専門家として築き上げてきたものです。
それが、税以外の部分で壊れていったとしたら悲しい話ですね。
税理士さんが、中小企業の身近な存在というのも先人達が築き上げ、今に至っているものですが、身近だからと言って、中小企業側が万屋のように使うのは間違いです。
ところで、当社は、以前、某大手証券会社の代理店をしていました。
投資信託の代理販売が解禁されたとき、提携をしました。
しかし、代理店としての販売実績はゼロです。
そして、昨年春に、販売実績を証券会社から問われた私は、「では、辞めます」と言って代理店契約を辞めました。
ちなみに、販売実績がゼロだった理由は、私の予測では、株式市場は下落すると考えていたこと、そして、某証券会社の品揃えと勧める商品に疑問を持っていたからです。
下落はたまたま当たりましたが、そういうことではなく、私たちは、お客様との関係が強いだけに、安易な手数料稼ぎに動いてはいけないという考えがあったからです。
そして、私自身が、株はいつまでも強くないと考えている以上、オススメなどはできませんでした。
なお、当社にも信和総合リースからのアプローチはありました。
しかし、お客様の信用を背負っている私たちが、手数料目的で付き合う必要はないという判断をしています。
それはそれとして、少しお金がかかっても、専門家に相談する。このことを痛感する事件が起きたということでしょう。
そして、税理士さんにも、安易な相談には乗らない戒めになったことだと思います。
地味なのが一番良いのです。