履歴書も見ずに、面接もせずに人を採用する会社はありません。
試聴もせずに、ジャケ買いしたレコードがハズレだったとしても、それは自分の責任です。
企業買収等において、相手先企業に対して事前に行う調査を『デュー・デリジェンス』、略してデューデリと言います。直訳は『当然行うべき努力』。
相手から渡された決算書を信じて企業買収を決断、ふたを開けてみたら決算書は粉飾だらけだった、なんてこともあり得ます。
やはり事前に、それが真実の数字なのかどうか、実査により調べなければなりません。
それが当然行うべき努力であり、仮にそれを怠って損失を被ったとしても、それは自己責任以外のなにものでもありません。
話は変わりますが、2009年2月に東京高裁より以下のような判決が出ました。
ある企業の経理担当者が、長年、不正経理により架空外注費を計上、取引先へのわいろ、もしくは自分の懐に入れていた。
数年後の税務調査で、企業は初めてその事実を知り、当然ながら経理担当者をクビにして、損害賠償請求を行った。
争点となったのは、その損害賠償請求金額を収入に計上すべきタイミング。
企業は当然ながら、被害を知り損害賠償請求をした年度に計上すべきと主張。
しかし、国側は経理担当者が不正経理を行っていた各年度に、相当配分して計上すべきと主張、さらには重加算税まで課すといいます。
何が異なるかと言いますと、企業の主張が通れば不正経理の事実を知り、損害賠償請求をした年分の利息を払うだけで済みますが、国の主張が通れば、不正経理が行われていた数年前からの利息を支払わなければならないことになります、さらには重加算税まで。
企業にとっての負担は大きく変わってきます。
…で結論、東京高裁は、国側の主張を認め重加算税も適法と判断。企業側にとっては大変厳しい判決となりました(上告はするのでしょうが)。
企業は決して意図的に悪いことをしていたわけではありません、むしろ、経理担当者にだまされ、払わなくてよいお金を払わされ続けていた被害者です。
それなのに、事実を知らなかった数年前からの利息まで納めなければならないとは、国はどこまで搾取すれば気が済むのでしょう。
…と思いますか?
真相はわかりませんが、報道によると、経理担当者はなにも用意周到に、悪知恵を働かせて、架空外注費を計上していたわけではないようです。
外注先への振込を決済する際に誰かが振込依頼書をチェックしていれば…、
相手先からの請求書と支払った金額とを誰かがチェックしていれば…。
どうやら、そういったレベルらしいです。
法人税は申告納税方式です。このようにお粗末なチェック体制では、意図せぬ悪意そのもので、国も困ってしまいます。
経理担当者の行為は、企業の行為。責任が問われても仕方がない気がします。
『会計がわからない…』、という経営者の会社には、このように経理がずさんな所が多く、そして、会社業績の悪さとも比例しているように思われます。
その状態で、会計事務所やコンサルティング会社にウワモノだけを望んでもあまり意味がありません。それを活かすだけの土壌がしっかりとできていないのですから。
そういった会社にはまず何が必要か、それは『セルフ・デュー・デリジェンス』です。
つまりは、自社を徹底的に実査する。有形・無形問わず。