多くの経営者が経営の現場で経験されていることと思いますが、ビジネスモデルによっては、売上が増加することによって資金が不足するということがおこります。
そのことに気付かずに経営を続けていると、事業は拡大しているにもかかわらず、最悪、資金ショートを招いて黒字倒産してしまうことがあります。
先日もある経営者の方が銀行から経営計画の見直しを求められ、当社に相談に来られました。
銀行が指摘したのは、「来季の販売戦略による売上拡大の結果、運転資金が不足し、資金ショートを起こすのではないか」というものです。
確かに、ここ数年この経営者の資金サイクルは長期化傾向にあったため、このままの資金サイクルでは資金ショートを起こす危険がありました。
このような場合に備えて、資金循環の効率を管理する方法をご紹介します。
それが『CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)』という指標です。
CCCは企業の資金循環の高さを示す指標のため、将来の財政基盤に与える影響が大きく、投資家の間でも、投資判断の指標として世界標準になりつつあるようです。
まず、次の図をご覧ください。これは貸借対照表の一部を切り出したものです。
企業がどれだけの運転資金を調達したかは、次のように計算することができます。
売上債権<受取手形, 売掛金>+在庫-買入債務<支払手形, 買掛金>
仮に、この企業の年商が1億と仮定すると、この企業は年商の7%に相当する資金を調達したことになります。
これがこの企業の運転資金調達率となります。
そして、CCCとは、資金の調達高を期間であらわしたものです。
棚卸資産回転期間:商品購入から販売までに要する期間
売上債権回転期間:商品販売から代金回収までに要する期間
買入債務回転期間:商品購入から代金支払までに要する期間
上図より、資金循環に要する期間は、次のように計算されます。
1. 商品購入から代金回収までに要する期間、棚卸資産回転期間+運転資金回転期間
2. 商品仕入から代金支払いまでに要する期間
3. 1と2の期間の差分が資金調達に要する期間となります。
また、CCCは365日に資金調達率7%を乗ずることにより求めることもできます。
資金効率を高めるためには、このCCCを短縮することが必要になりますが、そのために確認するポイントは以下の通りです。
1. 在庫は適正か?不良在庫はないか?
2. 代金回収に遅延はないか?また、不良債権はないか?
3. 必要以上に現金仕入れを行っていないか?
これらの項目について確認を行うとともに、CCCを時系列で管理することが重要です。
≪CCC比較表≫
パナソニックでは2000年以降、松下幸之助が創業以来伝統的に行ってきた月末現金支払いを大口取引先に限り、90日後の支払いに変更しました。
この結果CCCは2000年3月期の82日から前期45日に短縮しました。
理屈上では在庫を持たず、早く回収し、遅く支払えばいいだけのことですが、パナソニックのような一流企業ならともかく、中小企業では欠品による機会損失や仕入先の信用失墜、与信低下につながる危険性もあることからうかつなことはできません。
そこで、私たちがすべきは、資金循環のサイクルがあることを認識したうえで、CCCの変化に注意を怠らないということです。
月: 2012年10月
中小企業承継事業再生計画
『エルスバーグのパラドックス(※)』と呼ばれる有名な実験は次の通りです。
条件の違うボックスが、次のように2つ用意されており、中には赤と黒のボールが合計で100個入っています。赤のボールを引いたら当たり、賞金は1億円です。
●ボックスA
赤のボールが50個、黒のボールが50個、合計100個。
●ボックスB
赤と黒のボールで構成させており、同じく合計100個。
しかし構成割合はわからない。
あなたは、どちらの箱に手を入れますか?
実験の結果、多くの人がボックスAを好むことがわかっています。何故でしょうか?
ボックスAは、赤を引き当てる確率が50%です。
一方、ボックスBは確率不明、ボックスAより不利かもしれませんが、有利かもしれない。赤が100個という可能性だって十分にあります。
しかしながら、多くの人はボックスBを選ばない。なぜなら、人々は「不確実性」を回避する傾向にあるからです。
「リスク」よりも、「わからない」ほうが体感的に怖いのです。
「わからない」が目の前に広がっていたとしても、実験のように、代替案としてのボックスAが用意されていれば人々はリスクを感じながらもそちらに動くことが出来ます。
しかし、今の経済状態は「わからない」にもかかわらず、ボックスAが用意されていない状況。
となると、本来であれば、そのブラックボックスを少しでも「わかる」ように努力して、認知できた範囲で行動を決断していかなければなりません。
しかし、ここで邪魔をするのが最大の誘惑である「決断の留保」、つまりは先延ばし。
「わからない」のだから少し待とう、ということです。
企業経営に例えるならば、資金的に余裕のある大企業であればあるほど、留保期間は長く確保できてしまいます。
その誘惑に負けてしまった結果が、世界的に見てもわかるとおり、3つのうちの2つを破綻に招いてしまったのです。
「アメリカの会社がお国柄、ラフな経営をしていただけ、日本の大企業はそんなに脆くない。」と思われるかもしれません。
確かに、日本の大企業はきめ細かい経営をしているかもしれません。しかしその分、中小零細企業に歪みが来るのは必至。
そんな経済局面を受けて、政府は4月末に「第二会社方式」をバックアップするため
『中小企業事業承継再生計画』の認定制度を創設しました。
ちなみに「第二会社方式」とは、事業のすべて、または優良セクションを、他の事業者(第二会社)に承継させて、赤字部門を残した旧会社を閉じてしまう再生スキームです。
再生計画が認定されると、
●事業上の許認可を新会社に承継することができる
●金融機関から低利・別枠等の金融支援を受けることができる
●新会社への不動産移転に伴う、登録免許税・取得税等が軽減される
といった恩恵を受けることができます。
脱皮したての会社にしてみると、税優遇はおまけとしても、許認可の引き継ぎと金融支援は大変助かります。
今までのように、許認可を再取得しなければいけない場合(もちろん避けるための例外手法は存在しますが)には、事業上の空白期間が生じ、多額の機会損失が発生してしまいます。
機会損失で済めばまだしも、地域によっては、許認可の登録制限数がかかったり、法改正により、新規申請が認められない、といったパターンもありました。つまりは廃業です。
また、「第二会社方式」というと借金から合法的に逃れる方法・・・、というイメージが強かったため、不純物を取り除いて純白な新会社になったとしても、金融機関もそれなりの対応しか出来ず、資金調達が容易ではありませんでした。
それらの問題点をカバーした今回の認定制度創設は、本当に志を高く持って事業再生をめざす中小企業にとってはまさに朗報です。
認定を受けるための要件は多いのですが、「相続税の納税猶予制度」のように、通ることすらままならない程、網目の細かいフィルターがかけられているわけではありませんので、実務としても夏頃から本格的に動きを見せると思われます。
ただ、そういうネットが敷かれたことで、「決断の留保」の呼び水にならなければいいのですが・・・。
(※)ケインズのライバルと称されるフランク・ナイトの『不確実性理論』を、ダニエル・エルスバーグという経済学者が実験として発展させたもの。
会計でもっと仕事が楽しくなる方法
今年も早いもので5ヵ月が過ぎようとしていますが、
私は9月が待ち遠しくて仕方がありません。
それは、9月が弊社の損益分岐点だからです。
つまり、9月以降の売上は全てが『利益』となるのです。
そう思うと俄然やる気が出てきます。
厳密に言えば原価(変動費)がありますので売上げのすべてが利益ということはありませんが、税理士事務所の原価などたかが知れていますので、私は『売上=利益』とみています。
こういった情報を得ることができるのは、私が少しだけ会計の知識があることと、『CVP分析』の手法を知っているためです。
すでにご承知の方も多いと思いますが、CVP分析とは、Cost(コスト)、Volume(量)、 Profit(利益)の三要素の相関関係を分析し、経営に役立つ情報を提供するものです。
皆さんが普段ご覧になっている決算書からは本当に経営に必要な情報を得ることはできません。
次の図をご覧ください。
この図は皆さんお馴染みの『損益分岐点図表』とは少し違った要素が入っています。
それが、『予算コスト』と『稼働率』です。
具体的な計算方法については、弊社が行う、「カラダとアタマで会計を学ぶ『会計ワークショップ』」にてお話していますので、計算方法がお知りになりたい方は是非ご参加下さい。
予算コストとは、変動費以外の予定稼働率100%において予測される費用の総額を表します。
そして、もう一つの重要な要素が、損益分岐点を達成するまでの達成月数(稼働率)についてです。
CVP分析では、損益分岐点における売上高が明らかになりますが、更に重要なことは、その売上高を期首からどの程度の時点で達成できるのかという視点と、その期間を短縮するための方法を構築することです。
つまり、損益分岐点を一日でも早く達成することは、その事業年度の資金分岐点を達成することに相当します。
私が税理士になったのは10年前です。ちょうど3年前にこの「カラダとアタマで会計を学ぶ『会計ワークショップ』」(旧「会計するカラダVS会計するアタマ」セミナー) に一税理士として参加しました。あの時の驚きは今でも忘れません。会計のセミナーとしては他に類を見ない内容です。
このように、経営の意思決定において役立つ会計の知識はたくさんあります。それを、不況の今だからこそ「カラダとアタマで会計を学ぶ『会計ワークショップ』」 でお伝えいたします。経営者の皆さんには絶対に学んでいただきたいセミナーです。
得意は不得意のはじまり
意外なことですが、会計が得意な人がいる会社の経理が、
時代遅れになることがよくあります。
売上げ数十億円以上の地方の中堅企業などは、多くの会社がそういう状態です。
しっかりした経営担当が居る。
そして、老舗の税理士事務所が顧問をしている。
こんなケースでよく起こることです。
そして、意外にも、経理担当者が経理の素人のような小規模企業の方が経理は進んでいます。
困らないと、解決は誰も図りませんから、経理担当がまともにいない企業の方が、会計の仕組みを作り上げてしまうのです。
さらに、こうした小規模企業の方が、若手の税理士が顧問になるケースが多いですからなおさらでしょう。
こうした経理の世界で起きていることを笑うことはできません。
明日は我が身の可能性があります。
自分が得意だと思っていることほど、時代遅れになる。
それは経理に限らず、いろいろな場面で起こるはずです。
言うまでもなく、典型はインターネットやITの世界。
こうした分野は、これからもどんどん新しい技術が出てきて、
私たちが今やっていることを陳腐化させていくことでしょう。
そして、それは、そうした分野に限らず、私たちそれぞれの本業の分野にも及ぶはずです。
1400年代に発明された“簿記”は、
ゲーテをして
「人類最大の発明」
と言わせました。
そして、本当にそれだけのものらしく、
この約600年間、その基本的な仕組みを変えていません。
そこで、このことにあぐらをかいてしまったのが経理の世界かもしれません。
私は、昔、税理士さんが集まるところで講演し、
「みなさんが金科玉条にしている会計は、価値がなくなる」
と言い放って、物議を醸したことがあります。
当時の税理士さん達の反応は、
「この若い奴は、何も分かっていない失礼な男だ!」
と言うものでした。
しかし、その後、経理ソフトが一般化し、
彼らが主要業務としていたことは、付加価値がなくなってしまいました。
ところが、中堅企業とされる中規模企業では、
まだ、その亡霊が巣くっています。
先般も、先代が経理に詳しいという中堅企業が、
まだ旧態依然の伝票会計を行っているという相談を受けました。
社長の妹が経理を牛耳っている中堅企業から相談を受け、
経理の仕組みを調査してみると、あまりの無駄の多さにびっくりしたという事例もあります。
別に、経理は正確な数字を出せば十分・・というのも一理です。
その過程は問わないというのもアリでしょう。
しかし、そのおかげで、本来できるはずだった社内の管理や分析ができていない・・という例が多いのが現実です。
歴史の長い企業ほど、社内システムを丁寧に見直す必要がある・・と多くの事例を経験しながら、いつも思っています。
税理士がイヤ
時々、あまり縁のないところで話をすることがあります。
いつもの場とは、雰囲気が違うので戸惑いもありますが、自分の知らない世界との遭遇は楽しいところもあります。
最近、そんなノリで行ったのが、法人会の婦人部。
法人会は税務署の外郭団体らしいのですが、何をやっているのかよくわかりません。
ここも天下り先の一つなのでしょう。
地域の主立った会社は、だいたい会員で、会報誌なども発行しています。
当社は会員ではありませんが、税理士法人だからなのか、会報などは送られてきています。
正直なところ、こんな会報出してる時代じゃないよ!
という感じですが、こういうところは、こんなものですね。
さて、その法人会の婦人部で、税金の話を頼まれていたのですが、まったくしませんでした。
なぜならば、私が地元で税金の話をすると、話を聞いた人たちが、顧問の税理士に、
「こうやって」
とか
「こういう話を聞いた」
と言うのですが
だいたい物議を醸すのです。
税理士さんにとっての常識は、狭い世界の常識でしかなく、私なんかが違う視点から切り口を見つけると、だいたい大きな抵抗に遭うというのが相場なのです。
そこで、参加者の奥様方に、質問をいただき、それに答えるという形式をとったのですが、いきなり最初の質問が、
「良い税理士の見つけ方」
でした。
そして、その質問に反応して、何人かの方が、顧問税理士の悪口をはじめました。
私は、それに対して、一言。
「どうせ、不満があっても、変えないでしょ」
その一言に、みなさん、深くうなずかれました。
これは、すごいロックインです。
これほどのロックインは、携帯電話のポイント制度もかなわないかもしれません。
不満があるのに、誰も税理士を変えようとしない。
地方の税理士はおいしい商売ですね。
では、どうして、不満なのに、変えないのでしょう。
理由は明白です。
どうでもいいのです。
申告なんてどうでもいい。
決算書もどうでもいい。
そういうことでしょう。
痛みを感じてまで、変える必要性のないもの。
それが中小企業の会計です。
では、どうしてそういう中小企業が「良い税理士のの見つけ方」を知りたいのでしょう。
それは基準が欲しいからです。
いかに悪いかを知りたいのです。
事実、私に、いかに自社の顧問税理士が悪いかを具体的に訴えた方々のニーズは、単に、話を聞いてうなずいて欲しい・・というものでした。
だって、私が、「じゃー、税理士を変えますか?」と再び念を押しても、
「いえ」
とはっきり答えましたから間違いありません。
しかし、こんなことはどうでもいいのです。
問題は、こうした地方の中小企業の姿勢は、税理士に対してだけではなく、事業の全てにおいて起きている可能性がある・・
というところにあります。
もしかしたら、日本の資本主義が、もっと合理的な活動が主流だったら・・・・・。
その場合、多くの企業が市場から退場していなくてはならない可能性があります。
・・と言うか、きっとそうでしょう。
このままで行ければ、それが一番。
それは間違いありません。
でも、そうなることはあり得ません。
「うちの税理士さー」という発言は、中小企業の非合理的営みの象徴・・と私は見ますが、いかがでしょうか?
意外と盲点
「取引先が倒産した!」
って聞くと、冷や汗をかきますよね?
さて、企業倒産の分岐点と言われていた3月から4月に切り替わりました。
そして、このテーマで書こうとしていた矢先の事です。
「山田さん、印刷業者が倒産しました!」
取引先の倒産という場合、まず考えるのは貸し倒れでしょう。
今の時期、債権管理の重要性は、ここ数年とは比較になりません。
“B to B”ビジネスの企業様は、本当に気を付けて下さいね。
「気を付けるって言ったって・・・」
って声が聞こえてきそうですが(苦笑)
ただ、倒産しそうな企業は、必ずその予兆があります。
それは、ほんの些細な事です。
普段と違う動きがあるとか、連絡の頻度が変わるとか。
危険を感じる取引先とは、取引自体を中止するという判断もあり得ます。
ただ、そうは言っても現実問題は難しい・・・。
そうであるならば、徹底した情報収集や前金の受領、信用取引に上限額を設定する等、何かしらの対策を講じるのは必須です。
連鎖倒産は確実に起きていますので。
・・・ここまで読んで、「今回は倒産と債権管理の話かー」と、お考えの皆さん。
実は違います。
債権管理については書きたい事はたくさんありますが、それは皆さんも常に考えているでしょうし、よく話を聞くはずですので。
冒頭の印刷業者の倒産話ですが、これは発注先です。
つまり、この企業様にとってはお金を支払う側。
「なんだ、それなら支払いも一時保留になるだろうし、大きな問題ってあるの?」
そうお考えなのは当然です。
しかし、意外と盲点なのが、発注先業者の倒産です。
このお客様で言えば、集客が生命線。
明日の折り込みチラシがいきなりストップしたら・・・。
考えただけでも恐ろしい。
この倒産情報、実はこの印刷業者の下請け先から連絡が入りました。
チラシの折り込み業務を請け負っていたのが、この下請け先です。
「週末の折り込みのために、直接ウチにお金を支払って下さい。そうでないとチラシの折り込みを行いません」
倒産の場合、債権債務の権利関係が絡んでいるので、話はそんな単純ではありません。
また、当然ながら、チラシの在庫がこの下請け企業にあるのです。
「受注先からまだお金をもらっていないから、この在庫は引き渡せない!」
って話になると、さらにややこしい。
実はこの下請け企業も倒産寸前で、お金を支払ってもチラシが折り込まれなかった!
なんて、あり得ない話ではありません。
大不況の中、「経費削減!」の号令で、真っ先に対象となるのが「広告宣伝費」。
ですから、広告関連業者の倒産リスクは、他業種に比べていち早く高まっています。
とはいえ、他社が広告宣伝費を削減し始めているからこそ、低い広告単価で大量に宣伝出来る可能性があります。
余力がある企業は・・・。
私も、担当先企業様の予算組みした経費の中で、真っ先に予算実績対比を行うのが、広告宣伝費です。
「広告宣伝費の実績が、予算を下回っていますよ。大丈夫ですか? このままで売上げを確保できるのですか?」
成り行きで経営してきた企業と、きちんと計画を立てていた企業では、いざというときの選択肢の幅に大きな差が出ます。
実は、その企業に余力があるというよりも、先の事を考えて、つまり経営計画を作成する過程において、あらゆる事態を想定していれば、乗り切れる場合が非常に多いのです。
この典型は資金繰りですが。
また、今回は広告業者のお話でしたが、最大の問題は仕入れ業者の倒産です。
1~2年前、夜遅くにお客様から電話がありました。
「最大の仕入先が倒産した! 今、預け在庫を回収するためにスタッフが飛び回っている!」
これほど恐ろしい事はありません。
仕入先が倒産したという事は、売る物がなくなるという事です。
しかも、代替がきかないような商品を扱っている場合、致命傷になります。
このお客様の例は、まさに代替がきかない仕入先でした。
一時期、商品が欠品してしまい、売上げが激減してしまったそうです。
下手をすると、貸し倒れとは別の連鎖倒産が起こりかねません。
売る物が無くなるという事は、入金がストップするのですから。
取引先を絞って取引額を増やし、取引単価を下げるという手段は王道です。
ですが、このような手段も、取引業者が倒産しないという大前提に立っています。
今のような大不況期においては、取引単価はあえて目をつむり、取引業者を分散するという選択も考える必要があります。
リスク回避の保険料という感じで。
残念ですが、これまで成り行きで経営を行っていた企業は、現時点では生き延びる事を最優先に考えなければなりません。
そうであるならば、リスクの高い取引先との取引は見直して、受注単価を下げてでも、安全な取引先との取引額を増やすという手段を取る事も視野に入れる必要があります。
逆に言えば、余力のある企業は、受注単価を下げてでも仕事が欲しいという業者を探す絶好のチャンスです。
仕入れ単価が下がれば、価格競争力も上がります。
広告単価が下がれば、物量作戦で一気にブランディングが出来ます。
さあ、皆さんの会社は、今、何をすべきでしょうか?
保険による節税
ある日、セミナーに参加していた経営者が、不安そうに質問をしてきました。
「実は、昨年、税理士の薦めでガン保険に節税目的で入ったのだけど・・」
彼が、このような質問をした理由は、私がある保険代理店の人と節税保険の問題をいろいろと話していたからでした。
細かい数字は、忘れましたが、10年後の退職を想定してガン保険に加入。すでに2年分で600万円の掛け金を払った・・というような感じでした。
10年後の退職時に、保険を解約し退職金で払う。よくある節税の方法です。
保険代理店の人は言いました。
「ガン保険を使って、まだそんなことしてるんだ・・・」
私は言いました。
「10年後の退職なんて、何を根拠に言ってるの?」
二人にこう言われた経営者は、その後、セミナーの内容など上の空。
「解約しようかな~」
と言い出しました。
細かい話はわかりませんから、解約はよく考えてするように言いましたが、その経営者は、ガン保険による節税の曖昧さばかりではなく、私に10年後なんてわからないのではないか?と言われたこともショックだったようです。
私は断言してしまいます。
彼は10年後辞めていない・・と。
非常に優秀な経営者ですから、節税のために決めてしまった10年という期間なんて、その場になれば冷静になって無視すると思います。
そして、10年前の決断を「バカだったな~」と笑うことでしょう。
しかし、どうして30代の経営者が10年後の引退を決めてしまったのか?
彼よりも一回り以上年上の私でさえ、10年後に引退なんてしていないと思うのに不思議です。
そして、こういうアドバイスをした税理士とは何なのでしょうか?
本来、経営者が、こうしたことを保険代理店に吹き込まれたら、停めなければならない立場にある顧問の税理士が、保険の手数料稼ぎを優先している・・と思われても仕方がないでしょう。
前回、税理士が絡んだ事件を例に、税理士のアドバイスを鵜呑みにしてはいけないことを書きましたが、あのような投資案件ばかりではなく、日常的に行われているアドバイスでもおかしなことが行われているように思えました。
節税はどんどんやるべきです。
この国のおかしな税制に100%対応できる方法は日本に居る限りありませんが、それでも努力は必要です。
しかし、ナンセンスなことをしても意味はありません。
私たちは、節税をしなくてはいけませんが、節税をすることが経営をする目的でもありません。
不況期に入り、こうした節税保険の解約で赤字を埋める場面も出てくるかもしれませんが、それは結果論。
その結果から過去の意志決定が正しかったと考えるのは間違いです。
それは単なるたまたまです。
運用でも節税でも、時々、“たまたま”が起こることが話をめんどうにしていますが、私たちはあくまでも合理的に経営をしていくべきです。
合理的とは言いますが必要なのは常識です。
くれぐれも、安易な方法には乗らないように気をつけましょう
ボーナストラック
アルバムの末尾に収録されているアレ、ボーナストラック。
リミックスやデモバージョン、未発表曲、などが主流でしょうか。
コアなファンへの訴求力になることもありますが、基本的にはハズレが多いもの・・・、というか、そもそも誰も期待すらしていません。
稀に、リミキサーのクレジットからワクワクすることもありますが、結局ダメで、期待した自分を「そもそもボーナスなのだから・・・」と、戒める・・・。
4月10日、政府・与党は追加経済対策を発表しました。GDPを2%ほど押し上げる効果を期待しての内容は、
■ 3~5歳の子供を持つ世帯に対して年36,000円を支給する。
■ 13年以上使った車から、エコカーに乗り換えた場合に最大25万円を支給する。
などなど、財政支出が過去最大と言われるだけあって、一般消費者が理解しやすい、ポップで派手なものが並びました。
景気が回復してから消費税で穴埋めですね・・・、とは思いつつも、目先の緊急対策としては、確かに消費を刺激しそう。
ただし・・・、税制に関しては・・・、ダメなんです。残念ながら。
ラインナップは次のとおりです。
■ 親や祖父母等からの住宅購入資金の贈与は、500万円まで贈与税を課さない。
■ 研究開発にかかる税額控除限度額を、法人税額の20%から30%に引き上げる。
■ 資本金1億円以下の法人にかかる、交際費の定額控除額を400万円から600万円に引き上げる。
1,400兆円といわれる「個人金融資産」を流動的にさせるためなのでしょうが、家を建てるために、親からお金をもらう、というケースはかなり限定的ではないですか?
また、研究開発優遇をしてしまうと、リッチな会社と、費用捻出ができない会社との格差が広がるばかり。このタイミングで、少数のリーディングカンパニーへの優遇なんですね・・・。
そして、交際費の控除枠拡大・・・。
交際費は、いわゆる贅沢費なので、基本的には経費になりません。ただし、中小企業については、競争力の観点から年400万円までは、支出額の90%相当を経費として認めています。
今回の改正で、その枠を年600万円に拡大するというのですが・・・、国税庁の標本調査によれば、今回の対象である中小企業における、平均の年間交際費は約90万円。
従来の控除枠400万円内に十分入っており、拡大してもらう必要はまったくないのです。
政府の構想としては、交際費の控除枠を増やして、地域飲食店での消費を促そう、ということなのですが、残念ながらそうはいかないでしょう。
本業へのバウンドから考えて、「控除枠が増えたから交際費を増やそう」というマインドに動くはずがありません。
つまり、ただ結果として400万円を超えて交際費を支出していた会社が、タナボタ的に恩恵を受けるだけ、ということになってしまいます。
もっと見直すべきものが他にあるのでは? と思いたくなってしまいますが・・・、平成21年度の税制改正はおこなわれたばかり。今回は、そもそもボーナスなのですから・・・。
…でも、フロアーライクな珠玉のボーナストラックが、稀にあったりもするんですけどね。
あいつが帰ってきました・・・
17年振りに帰ってきました。
「欠損金の繰戻し還付制度」
これは当期に赤字(欠損金)が出た場合に、前期に納めた税金の一部または全部を還付請求することができる制度です。
適用対象となる法人は、資本金1億円以下の法人で、今年の2月決算法人から適用が可能となりました。
これによって景気後退による赤字決算の補填も少しはできるようになります。
ところが、この制度はひとつ大きな問題を抱えています。
それは、この繰戻還付制度の適用を申請する場合には必ず『税務調査』を受けなければならないという“都市伝説”があるのです。
政府も厳しい国家予算の中から税金を還付しなければならないのですから、あえてこの制度を使わせたいということが無いことは誰でも想像がつきます。
そこで、税務署が税務調査を制度適用の抑止力としていることは間違いないでしょう。
これによって、まだこの制度があったころ、制度の申請を控える経営者がいたのも事実です。
ところが、それだけではありません。税務調査を敬遠する税理士自身がこの制度の適用判断を経営者に知らせないという最悪の事態も考えられるのです。
あなたの会社の顧問税理士は皆さんの味方ですか?
本当に皆さんのほうを見ていますか?
みなさんの会社が前期が黒字決算で税金を納めており、今期が赤字決算である場合にはそれ自体が私たちの『踏絵』となるのです。
税務署の対峙は税理士に任せ、業績悪化による資金ショートを招かぬよう、必ず税金の還付を受けられるように準備を進めてください。
私を雇って税理士クビにしませんか?
今年も確定申告の季節がやってきました。
昨日は恒例となった無料納税相談の当番日で、私は申告書作成の相談にあたりました。
ここ2、3年の間に相談会場の様子は一変しました。
以前は会議用の折りたたみ机がいくつも並べられ、みんな申告書に手書きさせられたものですが、最近ではすべての机の上にパソコンが設置されており、一人に一人、一般人の臨時職員(昨年はバイトの学生もいた)がついてパソコンの操作方法を教えています。
なぜこうなったかと言うと、数年前から国税庁のホームページでは確定申告書や消費税、贈与税の申告を手軽に作成できるサービスが設けられたためです。
ところが、税理士が行う相談ブースと税務署が行う相談ブースはパーティションで仕切られており、相変わらず手書きで申告書を書かせています。
この違いは何でしょうか?
税理士会の会議の中でこのことが問題にあげられました。
「資格のないバイトが申告書の作成を行うのは問題だ!!」
「間違ったことを教えている!!」
確かに私もバイトくんが間違ったことを教えているのを見たことがあります。
しかし、ちょっとした間違いです。悪意なものではありません。
仮に申告が終ったあとで間違いが判明しても大問題となるようなことではありません。
ようは“直せばいい”。
しかし、この“直せばいい”ということに抵抗がある方も少なくないのは事実です。
話題を変えましょう。
今から10年程前の話になりますが、生意気だった私の話をします。
当時税理士になる勉強をしていた私は受験勉強もひと段落し就職先を探していました。
会計事務所ではなく中堅企業での就職を探していたところ、『上場準備のため財務部門を統括する人材を求む』という求人を目にしました。
さっそく連絡をし面接に行きました。
面接をしていただいた方の肩書は覚えていませんが役付きの方でした。
私は面接の最初にこう切り出しました。
「御社には税理士はいますか?」
「いますよ。先日ちょうど税務調査があり何の問題も出てきませんでしたよ!!」
と少し得意げでした。
私はこう続けました。
「仮に私が御社の申告をすべて行い、税務調査において悪意ではない申告ミスを指摘され数千万円の追徴税額が発生したとしても、その税金は税理士が適正申告を行っていたなら納税していた金額です。」
「ここで考えるべきことは、追徴税額ではなくそれについてくる罰金の額です。」
「つまり、数年あるいは十数年に一度あるかないかの税務調査での罰金の額と、その間に税理士に支払う報酬額とのどちらが大きいか?ということです。」
「結論を言います。私を雇って税理士を解雇しませんか?」
面接の結果は秘密です(笑)
生意気で血気盛んだった昔の話と思って笑ってください。
しかし、私は今でもこの気持ちに変わりはありません。
今、税理士が行っている仕事の多くが新たなモノにとって代わる、いや、代わらなければならないと私は思っています。
ささやかですが、みなさんがご自分の確定申告をwebでできるようにセミナー映像を作成いたしました。
注意しておきますが、これですべての申告ができるわけではありませんが、少しでもみなさんのお役に立てれば幸いです。
みなさんを変えるのは私ではありません、みなさん自身です。
私どもはそのためのお手伝いを精一杯させていただきます。
みんなで変わりましょう。
生き残るために。