適正値の変更

このところ、取材を受ける機会が多くなっています。
ここ2週間でも、『フォーブス』『宝島』『夕刊フジ』の取材を受けました。
『クロワッサン』の取材を受けた辺りから、取材される雑誌などの幅が広くなってきているように感じます。
そして、ここ2週間で受けた取材の質問は、日垣隆さんとの共著『世界一利益に直結する“ウラ”経営学』の内容に関わるものに集中しています。
この著書は、倒産したアスコムの再建に、男気で協力した一冊ですが、再建中のアスコムには、取次会社の対応が冷たく、リアル書店では、紀伊国屋、丸善くらいにしか置かれることがなく、ほとんど幻の本みたいなことになっています(笑)。
しかし、そんな境遇の本の割には、日垣隆さんのブランドのおかげか、ジワジワと売れているようで、1万6000冊の初版の在庫はほとんどないようです(通常ならば、とっくに増刷ですが、この本の運命はこのまま終わらざるを得ません)。
比較的サラリーマン向けに書かれた本が、取次会社のサラリーマンの手で阻まれるというのが皮肉で笑ってしまいますが、その阻まれた本が雑誌社のサラリーマンの目にとまり、内容の一部が違った方法で公開されているというのも面白い現象です。
その雑誌の取材で必ず聞かれるのが、「変化する人間」と「変化しない人間」のお話です。
変化をする人としない人が一定割合でいる・・ということを著作に書いたのですが、この部分が、サラリーマン的に気になるらしく、「変化しない人はどうしたらいいのでしょうか?」という質問をいただくのです。
この質問には、ある前提があります。
それは、“世の中は変化するのだから、人も変化をしなければならない”という前提です。
そうでなくては、この質問は成り立たないでしょう。
では、この前提は正しいのでしょうか?
それは、ケースバイケースでしょう。
決して、いつも正しい前提とは言えないと思います。
ここのところ、サブプライム問題で大きく損失を出した人たちは、変化型の人々だと思います(売買時期によって様々ですから一概には言えませんが・・・)。
そして、郵便貯金に預けっぱなしのおじいちゃん、おばあちゃんは、結局、淡々と積み立てを続けていたことになります。
また、2003年から2007年前半くらいまでは、リスクを取る時代でした。
ですから、変化に積極的だった企業が良い思いをしてきました。
しかし、その時代が終わり、変化に積極的だった企業があえいでいます。
週刊誌などでは、倒産可能性企業の一覧も掲載されたりしています。
また、リスクが利益に変化しやすかった上記の期間に、大きく利益をあげた企業ばかりがあるわけではありません、この期間に投資に失敗し損失を積み立てた企業だってあります。
問題は、変化できるとかできないというところにはありません。
残念ながら、著作では、本の構成上、変化する方がよいという前提で書かれてしまった感がありますが、そんなことはないのです。
問題は、自分が、どちらの種類の人間であるかを知るところにあります。
そして、同様に、各会社の財務諸表にも、それぞれの個性に応じた適正値、その企業の時期に応じた適正値があります。
そうした適正値の管理こそが重要です。
問題は、多くの企業が、その自分にあった適正値に意識的ではないというところにあります。
当社は、最近、この適正値を変えました。
組織の成長過程から考えて変えるべきと考えたからです。
また、あるお客様の適正値も変えていただきました。
そろそろ、リスクに対して消極的になろうという考えからです。
また、あるお客様には、逆に保守的な数値から少しリスクを取っていただく数値の管理をお願いしました。
財務に、これが絶対という答えがありません。
そして、今はいろいろいろな意味で、こうした数値の見方を変える企業が多くなる時期だと思います。

【スタッフ】or【システム】

これは、中小企業にとって、永遠のテーマでしょうか?
特定の業務が、現状の体制では対応出来なくなった場合、基本的な選択肢は二つです。
人員を増加するか? システムを導入するか?
大企業であれば、良否は別にして、両方を同時に実行する事が出来ます。
つまり、正社員やパート、派遣社員等を大量採用し、
必要なシステムを導入する。
システムが順調に稼動すれば、順次、スタッフを減少させ、
システムが頓挫すれば、そのまま人力で対応する。
しかし、中小企業では同時実行が難しいので、選択せざるを得ません。
「スタッフ」or「システム」です。
スタッフについては、大企業のように大量採用で振るいに掛ける事が出来ません。
少ない採用人数の中で、経営者は常にドキドキしています(苦笑)
期待通りに働いてくれるか?
すぐに辞めないか?
一方、システムは、スタッフの採用以上に大きな決断が必要となります。
システムの規模にもよるでしょうが、投資額は少なくても100万円単位。
最近は、1,000万円単位のシステムを導入するケースも増えてきました。
ほとんどの企業は、システム導入について一度は考えた事があると思いますが、実際に導入している中小企業はまだまだ少数派。
それは、コストが最も大きな要因ですが、システムというブラックボックス的なものに、大きな投資を行う事への恐怖があるのも事実です。
例えば、スタッフ採用とシステム導入のコスト負担を比べると、3年未満くらいのスパンでは、スタッフ採用の方が低コストで済みます。
しかし、3年を越える辺りから、明らかにコスト負担が逆転してきます。
つまり、システム導入を決断出来るかどうかというのは、企業が3~5年以上の中長期的な戦略を描けるかどうかに大きく影響します。
当然のことながら、明日の事も考えられない企業は、システムを導入したところで上手くいくはずがありません。
そして、システム導入の決断という大きな山を越えたとしても、さらに大きな山が待っている点も怖いところ。
それは、システムが企業の期待通りに稼動するかどうかという事です。
かつては、大企業しか相手にしていなかったシステム開発会社も、大企業のIT投資が一段楽してきたため、近年は中小企業をターゲットにしています。
さらに、そのような会社が大企業の関連会社だったりすると、発注する側も名前で安心してしまい、他社との比較も十分行わずに、開発を依頼してしまいます。
そのような開発会社の見積書を何度も見た事がありますが、
お客様の「高い!」の一言で、驚く程の額の値引きが行われます。
じゃあ、その金額の根拠は何だったのだと(苦笑)
または、裏で手を抜くのかと勘ぐってしまいます。
システム導入に際しては、予算、業務プロセスの標準化、人材、セキュリティ等、クリアしなければならない問題が山積みです。
例え時間がかかっても、しっかりとコンサルティングを行ってくれ、
「業務オペレーション上、システムは必要ありません!」
とまでアドバイスをしてくれる会社に依頼したいものですね。
そこまで行ってくれて、見積もりの額が大きく変わる事などあり得ないのですから。
どの業界でもそうですが、見積もりの精度が、その会社の力でもあります。
当社も、お客様から紹介のご依頼をいただきますが、幅広いネットワークを持ってしても、安心してご紹介出来るシステム開発会社は数社しかないのが現実です。
売上高については、システムに頼らなくても、色々と勝負ができます。
ただ、いざ勝負しようとしたときに、業務効率が良くないと、大きな機会損失が発生してしまいます。
さらに、これからは、スタッフの人数は必要以上に増やさず、一人当たりの人件費を上げるような経営を行っていかないと、優秀な人材を確保できません。
そうであると、業務効率をいかに上げるか? そのためにシステム導入が必要なのか?
について、中小企業も真剣に考える時期に来ているのではないでしょうか・・・。
当社も、とうとう残業禁止デーが導入される事になりましたし(笑)