不況になると活動が活発になる“中小企業版オレオレ詐欺”、いわゆる“取り込み詐欺”の動きが目立ってきました。
ここ数年、90年代中頃の取り込み詐欺ブームの経験がない農家を中心に、静かに21世紀のブームがはじまっていました。
不況前から静かに動いていたのは、彼ら詐欺師に、不況の匂いをかぎ取る力があるからでしょうか?
確かに、彼らの方はいつも行動を続けているだけで、受注が減った企業側が不況になるとひっかかりやすくなるだけのようにも思えますが、周辺から漏れ聞く被害の状況からは、活動自体が活発になっているように思えます。
今回の不況を多くの人が認知する前から、お客様に注意喚起していましたが、私の周辺でも少額ですがすでに引っかかってしまった方がいます。
不況期の基本的スタンスは、「減収増益」です。
そして、“売りは怖い”という基本に帰って、取引先の与信の再チェックからはじめるのがセオリーです。
しかし、実際には、売上げが落ちる恐怖には勝てない企業が多く、ライバルが取引をやめたババ取引先を掴む場面も多くなってきます。
この企業版ババ抜きについても、2年前から、「そろそろ気をつけましょう」と注意喚起していましたが、思わずババを引いてしまった方が既にいます。
“詐欺”と“ババ”という2つの地雷をうまく避けながら売上げをさらに拡大するというのは大変難しいことです。
ですから、不況期の優先事項は“与信”になるわけですが、このシフトチェンジは思いの外難しいものです。
特に、営業マンの評価を売上げだけにしている企業などは、代わりとなる評価方法に気づきませんから売上げ至上主義の暴走はちょっと止めようがないかもしれません。
マニュアル車ならば、坂道はシフトダウンが常識。
状況状況に合わせて、シフトチェンジを繰り返していきます。
同様に、中小企業の運転も、状況に合わせて、管理する財務数値は変えなくてはいけません。
ここがわからずに、漫然と好況期と同様に数値管理をしていれば、罠に捕まる可能性は非常に高くなります。
本来、財務の専門家が最も頼りになるのは、こうした状況です。
しかし、残念ながら、環境に合わせて財務の管理方法が違うことをアドバイスできる専門家はそう多くはありません。
したがって、中小企業の経営者は、自らが管理すべき数値を選択し、守りのための財務管理を考えなくてはいけません。
“減収増益”という価値観。この価値観を基本とするならば、何を管理しますか?
単純に、経費削減なんて言わないでくださいね。