たかが一株、されど一株

前回に引き続き、同族会社を取り巻く自社株の取り扱いと、事業承継問題についてお話することとなっていましたが、今回は会社法によって変わった株主の権利についてお話いたします。
まず結論をお話しますと・・・
従来、自社株というと相続対策などで分散されがちだったのですが、これからは分散した株式を再び集めなければならない時代になりました。
なぜならば会社法によって、定款の書き方一つで経営方針に大きな影響を与えるようになったためです。
これが『定款自治の拡大』です。
ところでみなさんは、ご自分の会社の“定款”を見たことがありますか?
「ない」という方は論外ですが、「ある」という方でもその中身まで理解されている方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?
定款とは、会社の目的や組織、運営などを定めた会社の法律です。
従来の商法では個々の会社ごとに決めることのできる選択肢が少なく、各会社の定款に大きな違いはありませんでした。
ところが、会社法では種類株式の発行を認めるなど、定款の作り方ひとつで会社の運営の仕方が大きく変わってくるようになりました。
それでは、身近な例をあげてみましょう。
父親である社長が古参の従業員に対して、自社の株式を渡しているケースというのはよくあります。
従来であれば社長が株式の3分の2以上(正確には議決権)を所有していれば問題がないとされていました。
ところが会社法ではちょっと注意が必要です。
何故なら会社法の施行によって少数株主の権利が強まったからです。
株主の権利として「役員の解任の訴え」と「帳簿閲覧権」というものが認められています。
そして、この二つの権利はいずれも3%以上の株式を持っている少数株主に与えられた権利です。
役員の解任の訴えとは、役員の職務の執行に関し不正の行為、又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があり、かつ、総会においてその取締役の解任決議が否決された場合に裁判所に取締役解任の訴えを起こすことができるというものです。
そして役員の不正行為を明らかにする手段が会計帳簿閲覧権です。
この会計帳簿閲覧権では決算書のみならず、作成のもとになった元帳まで見ることができるため、会社内部の人間が元帳を見れば手に取るように不正なお金の流れが明らかになるはずです。
また、一株しか持っていない株主であっても、株主総会の開催の実態が無いなど招集の手続等が法令に違反している場合には、 裁判所に総会決議の取消しを請求することもできます。
そしてこれらの少数株主権をめぐる問題は、先代から事業を承継した二代目の経営者によく起こるのです。
会社法がかわってから熱心に勉強されている従業員さんや親族が結構いらっしゃいますので足元をすくわれないように注意してください。
では、株式を分散させないようにするにはどうすればいいのでしょうか?
そこが重要な問題です。