現実を並べる

『創造力がはたらく人は、知識・情報蓄積の多い人。センスよりも大事。』
年初の弊社会議で岡本が言いました。
『バンドを組んだばかりの10代の頃、さまざまなバンドの好きな楽曲を10曲並べて、好きな部分だけを切り取り、ツギハギにしてオリジナル曲を作ったものだ。』
レディオヘッドのフロントマン、トム・ヨークが言ったことを思い出しました。
急速な景気悪化に伴い、貧富の差はより厳しくなっていきます。『1億総中流階級』の意識があった日本も、今やジニ係数(※)0.53です。
0.5を超えてくると貧富の差が大きく、社会の歪みが目立つので政策(主には税制と社会保障)で整えなければいけません。
しかし、今の状況では景気回復最優先。税制によって格差を整えるために、どこかを減らしてどこかを増やす、というよりもとにかく減らす、そして消費促進。
・・・のはずなのに、年末に発表された税制改正を見てみるとなんだか頼りない。特に中小企業には。
特殊支配同族会社の役員給与損金不算入制度はそのまま、法人税率もわずかに下がっただけ。
そもそも日本の法人税率は40%、隣の韓国は27%ですし、EUなんて平均24%ですから、諸外国に比べたらものすごく高いのです。
個人の暮らしに関しても、住宅や自動車を中心に減税策が図られているのですが、消費を促すまでに至るかどうか・・・。
と述べてみても、結局は現実の確認にしかすぎません。国を変えようとしてもそう簡単には変わらないのですから。
それでもやはり確認は必要なのです。変わらない現実を机の上に並べる、できるだけ数多く並べる、そこから進むべき道を『創造』する。
税制改正だって、経営のために並べるべき現実です。
『創造力がはたらく人は、知識・情報蓄積の多い人。センスよりも大事。』
税制改正を文字の羅列と捉えずに、ポイントだけでも顧問税理士に確認しましょう。顧問税理士だって、聞かれなければアナウンスしないかもしれません。
『バンドを組んだばかりの10代の頃、さまざまなバンドの好きな楽曲を10曲並べて、好きな部分だけを切り取り、ツギハギにしてオリジナル曲を作ったものだ。』
アーティスティックな分野でも最初はそうなのです、どれだけ数多くの楽曲に触れてきたか、どれだけの展開パターンを知っているか。その組み合わせなのです。

会社が静止する日

当社では毎年元旦に岡本より新年度の『経営方針』が届けられます。わざわざ元旦にです。
受け取る私の気分としては『ミッションインポッシブル』
わざわざ元旦に見たくないのでそっと机の上において置きました(笑)
世界は今、『100年に1度』の経済危機を迎え、物価が下落しても需要が拡大をしない『デフレスパイラル』の恐怖が日を追うごとに現実味を帯びてきました。
そこで現在国会では、定額給付金やら減税規模1兆円の税制改正を審議していますが、肝心な税制改正の中身はカラッポです。
そのような経済環境にあって弊社の本年度のキーワードが決まりました。
『不況のおかげ』
これが当社が事業を通じて一年間突き詰めていくテーマです。
このテーマのもとマネージャはそれぞれの部門の経営計画を策定し、岡本に提出、話し合います。
いうまでもありませんが、不況期というのは基本的には無理に売上げをあげることはできません。
そこで経営計画の基本スタンスは『減収増益』という形になります。
減収増益という話をすると単純に『リストラ』とか『経費削減』と言う方がいらっしゃいますが話しはそう単純ではありません。
自社のビジネス構造を客観的に分析し、経営にもっとも影響を及ぼしているコストを計画管理することです。
しかし、コストコントロールだけではこの不況期を乗り切ることはできません。当然、販売戦略も考えなければなりません。
経営でもっとも大切なのはトータルでバランスがよいということです。
よく「経営計画を立ててもどうせ予定通りにいかない」と経営計画に批判的な経営者も見受けられます。
確かに経営計画を立てたからと言って直ちに利益があがり、金繰りが良くなることはありません。ではなぜ経営計画が必要になるのか?
人間の心と体は何も負荷をかけなければ常に楽な方に向かって行きます。
これは経営においても同じです。
経営計画をつくり心の準備(マインドセット)をしなければその経営は「放漫経営」となり必ず行き詰まってしまいます。
ちなみに当社の経営計画の作り方は驚くほど綿密です。弊社で税務顧問をさせていただいているお客様とは毎年経営計画を作成するセミナーを行っています。
今年、みなさんの会社ではどのような心の準備をしましたか?
まだの方は、年頭にあたって経営計画の見直し又は作成を行ってみてください。
タイトルから皆さんご推察のとおり『地球が静止する日』という映画を観て来ました。
ところで、キアヌ・リーブス主演の『地球が静止する日』がロバート・ワイズ監督による作品のリメイクだったことを正月に岡本より知らされ驚きました。
映画では瀕死の状態にある地球を救うために、宇宙人のキアヌ・リーブスは人類の消滅を決断します。しかし、人間はキアヌ・リーブスに対しこう懇願するのです。
「人間は環境に合わせて変化することができる生き物だ。」
「しかし、人間は瀕死の状態になるまで変わろうとはしない・・」
今、私たちは瀕死の状態にあるのでしょうか?そして、本当に変化することができるのでしょうか?
変化なくして、この歴史的な経済危機の中『会社が静止する日』を回避することはできません。

【中小企業版オレオレ詐欺と企業版ババ抜き】

不況になると活動が活発になる“中小企業版オレオレ詐欺”、いわゆる“取り込み詐欺”の動きが目立ってきました。
ここ数年、90年代中頃の取り込み詐欺ブームの経験がない農家を中心に、静かに21世紀のブームがはじまっていました。
不況前から静かに動いていたのは、彼ら詐欺師に、不況の匂いをかぎ取る力があるからでしょうか?
確かに、彼らの方はいつも行動を続けているだけで、受注が減った企業側が不況になるとひっかかりやすくなるだけのようにも思えますが、周辺から漏れ聞く被害の状況からは、活動自体が活発になっているように思えます。
今回の不況を多くの人が認知する前から、お客様に注意喚起していましたが、私の周辺でも少額ですがすでに引っかかってしまった方がいます。
不況期の基本的スタンスは、「減収増益」です。
そして、“売りは怖い”という基本に帰って、取引先の与信の再チェックからはじめるのがセオリーです。
しかし、実際には、売上げが落ちる恐怖には勝てない企業が多く、ライバルが取引をやめたババ取引先を掴む場面も多くなってきます。
この企業版ババ抜きについても、2年前から、「そろそろ気をつけましょう」と注意喚起していましたが、思わずババを引いてしまった方が既にいます。
“詐欺”と“ババ”という2つの地雷をうまく避けながら売上げをさらに拡大するというのは大変難しいことです。
ですから、不況期の優先事項は“与信”になるわけですが、このシフトチェンジは思いの外難しいものです。
特に、営業マンの評価を売上げだけにしている企業などは、代わりとなる評価方法に気づきませんから売上げ至上主義の暴走はちょっと止めようがないかもしれません。
マニュアル車ならば、坂道はシフトダウンが常識。
状況状況に合わせて、シフトチェンジを繰り返していきます。
同様に、中小企業の運転も、状況に合わせて、管理する財務数値は変えなくてはいけません。
ここがわからずに、漫然と好況期と同様に数値管理をしていれば、罠に捕まる可能性は非常に高くなります。
本来、財務の専門家が最も頼りになるのは、こうした状況です。
しかし、残念ながら、環境に合わせて財務の管理方法が違うことをアドバイスできる専門家はそう多くはありません。
したがって、中小企業の経営者は、自らが管理すべき数値を選択し、守りのための財務管理を考えなくてはいけません。
“減収増益”という価値観。この価値観を基本とするならば、何を管理しますか?
単純に、経費削減なんて言わないでくださいね。

勘違いしていませんか?

私の妻は税理士ですが、以前に彼女とこんな会話をしたことがありました。
妻 「50歳には辞めようね」
私 「そうだね、まぁ許されても55歳かな?」
今からこんな話をしていいものか・・・
二回にわたってオーナー会社における事業承継をテーマに話をしてきました。
前回に引き続き今回も特殊な株式を利用した事業承継の手法についてお話いたします。
おそらく皆さんは最近『事業承継』というキーワードをどこかしらで目にしていらっしゃるのではないでしょうか?
実は、我々税理士の間でも事業承継はビッグワードとなってきています。
これは、政府が事業承継について支援に乗り出したためです。
そこでできた法律がいわゆる『中小企業経営承継円滑化法』です。
この法律の中身は3つ。
・遺留分
・金融支援
・納税猶予
今回はこの法律の内容については話すつもりはありません。
周りの状況をみて必要と思えばあらためてお話いたします。
この法律ができた背景には廃業率が開業率を大きく上回っている日本企業の事業承継難があります。
政府は税金が足かせとなって事業承継がすすんでいないと思っているようですが、そんな企業はごく一部。
こんな法律で事業承継がすすむはずがないことは私が言わなくとも経営者ならみんな分かっています。
もちろんお客様のうち話す必要がある方には個別にお話をしていますが
メルマガで多くの方々に話す話ではありません。
日本における企業の8割が中小零細企業。
そのほとんどが事業承継に何らかの問題をかかえているのは事実だが、もっとも多いのは後継者不足。
後継者予定の息子はいるものの、経営者としての資質が備わっておらず事業承継どころではないというのがどこのオーナー経営者も持つ共通の悩み。
それでも思い切って後継者である息子に経営権を与えてみれば、糸の切れた凧のように本業も疎かに、新事業、経営革新と称して訳のわからないことを始める始末。
挙句のはてには、古参の従業員はオーナー経営者の息がかかっているため俺のいうことを聞かないと酒場で管を巻いている。
こんな後継者に事業を任せていてはどのような舵取りをするものかわかったものではありません。
そんなときに強力な役目を果たすのが、『拒否権付種類株式』通称『黄金株』とよばれる種類株式です。
この株式は黄金株と呼ばれるように最強の拒否権を持っています。
どれほど強力かというと、この株式を持つ者の承認がなければ株主総会の決定も、取締役会の決定もすべて無効となるくらいの凄さです。
つまり、拒否権付株式は、拒否権を使うことによって(後継者の)経営を監視する機能があるのです。
実際には、あらかじめこの株主の決議を必要とする事項を定款で定めておく必要がありますが、拒否権の設定によっては無敵の権限を与えることとなります。
しかし注意が必要です。
拒否権をむやみに設定しすぎると、利害関係者に対して実質的な経営者は旧経営者であるとの印象を強く与えることとなりますので、拒否権の設定は慎重に行う必要があります。
この株式によって後継者の暴走には一定の歯止めをきかせることが可能となりますが事業承継にとって本当に重要な話はここからです。
事業承継とは株式の移転や、読んで字の如く、『事業』を『承継』することと思っている方々がほとんどではないでしょうか?
それは違います。
事業承継の本質は『経営』の『承継』にこそあるのです。
事業とはビジネスそのもの。言葉はわるいですが明日からオーナーの代わりに社長席にすわって仕事さえこなせればいい話。
しかし経営の承継とは、創業から現在に至るまでの歴史、創業者の想い、お客様、変遷、苦難、喜び・・これらすべてを経営理念という言葉でまとめるならば経営理念の承継こそが本当に必要なのです。
それを、権限移譲という大義名分のもとに息子である後継者にすんなりと経営を明け渡してしまう無責任なオーナー経営者が多く目につきます。
「すべて(息子である)社長に任せてあるので・・」
私はそんな経営者を見ていつも思うことがあります。
それは、私たちの事業のすべては顧客のためにこそあるもので、後継者のためにあるものではないはずという強い思いです。
そうであるならば事業は渡しても経営権はそう簡単に手放すべきではないのです。それが起業家として事業を立ち上げたものが最後までまっとうしなければならない責務のはずです。
いつからそんなに物わかりが良くなったのですか?
すこし厳しいようですが私は事業承継の失敗によって悲しい結末を迎えた会社をいくつも見て来ました。そのほとんどが後継者による失敗です。
「松下はものをつくる前に人をつくる」
この言葉は松下電器の創業者松下幸之助が生前に語った言葉です。
私たちも事業の承継のみにとらわれることなく、経営を承継するに相応しい人づくりにもっと意識を向けたいものです。
税理士の中には高齢になられても、いや、歳をとればとるほど(頭に)冴えを見せる方もいらっしゃいます。
しかし、私はその歳になって到底そのような冴えをみせることはできないと考えています。
このような言い方をすると世の中の還暦を迎えた方に怒られてしまいますが60には60なりの仕事があると思うんです。
そういう意味からビジネスの最前線にいらっしゃる経営者の方々を相手に仕事をするべきではないと思うのです。
しかし・・この気持ちが60になったときに変わらず持ち続けていられるか・・今の私ではわかりませんが、そうでありたいと思う今日この頃です。

【困難な時期】と【状況判断】

先日、当社のWEBサイトの下記文章をご覧になって、ご連絡をいただいた方がいらっしゃいます。
「最も困難な創業時を乗り切るためには、やはり経営計画の立案は絶対です。
それも、創業初年度のみならず、その後の5年間も含めた、6ヵ年の経営計画を立案していただきます。
そこまでやって、軌道に乗らないのであれば、早急に見切りをつけるべきです。
必ず次の機会があるのですから。」
この方はおっしゃいました。
起業から2年が経過し、上記文章を読んで考え出したところ、壁にぶつかったと・・・。
そこに商材があったから起業したものの、それが6年後にあるかどうかは考えていなかったと・・・。
そこで私は、以下のようにお伝えしました。
「今からでも遅くはないので、この先の計画を立てて、大いに苦しみましょうよ。
当社はそれを見て、好きな事を言わせてもらいますので(笑)」
この方が、これからどのような計画を立て、そしてどのように行動をされるのかはまだ分かりません。
ただ、たまたま目にした当社WEBサイトの情報から、自社の現状を考えられ、当社にご連絡いただくという判断をされました。
この方にとって、この判断は必須だったと考えます。
状況的にも、これからの行動計画と数字への落とし込みをしておかないと、大変な事態になりかねません。
走りながらでは、気付かない事がたくさんあります。
一度立ち止まって、自らに気付かせなければならない事が山ほどあります。
2008年12月。
今の状況判断が今後数年間の行動に影響を与えるという点について、これ程重要な時期は稀ではないでしょうか?
この金融危機で、損害を受けた方も多い事でしょう。
しかし、状況を見極め、タイミング良く判断された方は、損害を被らずに済んでいます。
一体、何が違うのだと考えられますか?
それは、皆さんもご存じのように、情報の選別、正しい分析及び適切な判断につきます。
何から情報を得て、そこで何を考え、そして何を判断するのか?
今回の金融危機で言えば、株価の暴落前に、岡本は自らの投資をキャッシュポジションに変えていたそうです。
そういう意味では、岡本は金融危機に対して、情報収集・分析・判断を成功させたという事になります。
また、岡本は同時にお客様にもアナウンスしていました。
中には、岡本の話を聞いて、同じくキャッシュポジションにされた方がいるそうです。
自分の考えと一致しているかどうかは別として、“岡本の判断を信じる”と判断された方は、被害を抑える事が出来ました。
今回の金融危機は、一つの状況判断が、大きな影響を与える典型例です。
それでは、皆さんの会社は、ここでどのような判断をされますか?
今の判断は、当面の不況期の行動及び結果に大きな影響を与えます。
判断するための情報は既に入手されていますか?
入手した情報を分析されていますか?
当社は、お手伝いをする事は出来ますが、あくまで判断するのは皆さんです。
ご自身で考えられる必要があります。
今年の年末年始は休みが長そうなので、苦しむ時間もたくさんあると思います。
結果を残す方は、仕事のMらしいですよ(笑)
私の担当としては、今年最後のメルマガになります。
よくお客様に、「読者を追い立てるような文章が多いよね」と言われます。
いまだに、「儲かる」と甘い言葉で釣ろうとしている方が多いので、個人的に逆へ行きたがるのでしょうね(笑)

あなたの株が突然消える日

先日、またまた妻と映画を見に行きました。
今度は『容疑者Xの献身』
どうやら妻は福山雅治のファンでもあるらしい・・・
さて、前回はわれわれ中小企業の経営に潜む、少数株主の脅威についてお話いたしました。
その上で、株式は『分散から集中』へと変わるべきだと言わせていただきました。
そこで、いったん分散させてしまった株式を集めるために用いることができる株式が『全部取得条項付種類株式』という種類株式です。
今回は、この種類株式を使って分散した株式をすべて買い取る方法の概要をご紹介します。
全部取得条項付種類株式とは、少なくとも2種類以上の株式を発行している株式会社で、ある種類の株式の全部を会社が取得することについて定款でさだめている株式です。
そのため、まず、前提として一種類しか株式を発行していない会社の場合には、普通株式以外にもう一種類の株式を発行する必要があります。
ここでは説明上、もう一種類の株式をX株式と呼ぶことにします。
株主総会によってX株式を発行する決議を行うと同時に、既存株式について全部取得条項を付します。ただし、このときに反対する株主から株式買取請求がされる可能性がありますので、慎重に進める必要があります。
無事に、旧株式について全部取得条項を付すことができたら次は、X株式の発行を行います。このときにオーナーが全ての割当てを受けることによって経営権の集約をすることができますが、勘のいい株主によって否決される可能性がありますので、発行の経緯などやはり慎重な対応が必要です。
X株式の発行が完了すれば、あとは旧株式を会社で全部取得することによって計画完了です。
自己株式には議決権はありませんので、旧株式は急いで買い取る必要はありません。そのまま会社で持っていてもいいですし、消してしまっても構いません。
説明上、とても簡単に書きましたが実際には株式買取請求時の対応や対価の額など一定の手続きと税務リスクの検討必要となりますので、専門家のアドバイスのもとで行うようにしてください。
冒頭に書いた映画『容疑者Xの献身』ですが・・・堤さんと松雪さんの演技にやられました。はっきり言って泣きました。
松雪さんの役者としての引き出しの多さには驚きます。
いろいろと考えるところはありますが、人は生きる意味を見つけたときに生きていることを実感するものだということを改めて思いました。
『もの言う株主』という言葉が少し前に流行りましたが、中小企業における株主とは自己の利益にのみ囚われることなく、会社の永続発展のために・・・
それこそ『献身的』に尽くすくらいの気構えがいて欲しいと思います。

会社を切り売る

人間良いところもあれば、悪いところもある。自分にとってイヤなところも、人から見ると良い場合もある。
最近ポッコリと出始めたおなか、とても憎らしい。でも人によっては「かわいいね」、「貫禄があっていいね」と言ってくれることもある。
だったらあなたに譲ります、このおなか。 もしもおなかを売っちゃうとしたら…?
今さら私ごときが言うまでもありませんが、今後は経営環境が厳しくなるばかり…、「企業再生」はますます進んでいくことでしょう。
「企業再生」とは、あらゆる方法を使って、時には会社が形を変えて、蘇ることを言います。
会社も生き物と一緒です。環境に適合するためには、フレキシブルに形を変えて順応していかなければなりません。恐竜はもういません。
今のご時世ですと「企業再生」がいつまでも対岸の火事とは限りません。そして、「企業再生」は果たして火事なのでしょうか?
「企業再生」の中から、例えば、会社分割、事業譲渡。
会社分割、事業譲渡とは、会社のうまくいっていない事業を、欲しがる別の会社に切り売りすることです。
自分にとっては憎らしいおなか。でも他人にとっては羨ましいおなか。
「わざわざ、うまくいっていないセクションを別の会社に移さなくても、閉じてしまえばいいじゃないか!」
そう割り切って、大幅なリストラが出来る社長さんは問題ありません。しかし、そこまで冷酷に徹しきれない社長さんが多いのもまた事実。
情と現実の狭間で、見ない振りをしていた結末が近づく…。せめてもの救いは配偶者に自宅を贈与していたこと…、なんてケースも十分にありえます。
会社には、うまくいっている事業もあれば、うまくいっていない事業もあります。
イヤだな、自分には向いていないな、と思いつつ、騙し騙し付き合っていくのか。
他人に売っちゃって、そのお金を資本に、本業を充実させるのか。
社長としての正しい判断は? 自分自身の本音は?
もちろん、実際の現場ではそんな単純な話ではありません。でもきっかけとしては十分。すこしでも心に触れた方は、周りのブレインにお話してみてはいかがでしょうか。

たかが一株、されど一株

前回に引き続き、同族会社を取り巻く自社株の取り扱いと、事業承継問題についてお話することとなっていましたが、今回は会社法によって変わった株主の権利についてお話いたします。
まず結論をお話しますと・・・
従来、自社株というと相続対策などで分散されがちだったのですが、これからは分散した株式を再び集めなければならない時代になりました。
なぜならば会社法によって、定款の書き方一つで経営方針に大きな影響を与えるようになったためです。
これが『定款自治の拡大』です。
ところでみなさんは、ご自分の会社の“定款”を見たことがありますか?
「ない」という方は論外ですが、「ある」という方でもその中身まで理解されている方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?
定款とは、会社の目的や組織、運営などを定めた会社の法律です。
従来の商法では個々の会社ごとに決めることのできる選択肢が少なく、各会社の定款に大きな違いはありませんでした。
ところが、会社法では種類株式の発行を認めるなど、定款の作り方ひとつで会社の運営の仕方が大きく変わってくるようになりました。
それでは、身近な例をあげてみましょう。
父親である社長が古参の従業員に対して、自社の株式を渡しているケースというのはよくあります。
従来であれば社長が株式の3分の2以上(正確には議決権)を所有していれば問題がないとされていました。
ところが会社法ではちょっと注意が必要です。
何故なら会社法の施行によって少数株主の権利が強まったからです。
株主の権利として「役員の解任の訴え」と「帳簿閲覧権」というものが認められています。
そして、この二つの権利はいずれも3%以上の株式を持っている少数株主に与えられた権利です。
役員の解任の訴えとは、役員の職務の執行に関し不正の行為、又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があり、かつ、総会においてその取締役の解任決議が否決された場合に裁判所に取締役解任の訴えを起こすことができるというものです。
そして役員の不正行為を明らかにする手段が会計帳簿閲覧権です。
この会計帳簿閲覧権では決算書のみならず、作成のもとになった元帳まで見ることができるため、会社内部の人間が元帳を見れば手に取るように不正なお金の流れが明らかになるはずです。
また、一株しか持っていない株主であっても、株主総会の開催の実態が無いなど招集の手続等が法令に違反している場合には、 裁判所に総会決議の取消しを請求することもできます。
そしてこれらの少数株主権をめぐる問題は、先代から事業を承継した二代目の経営者によく起こるのです。
会社法がかわってから熱心に勉強されている従業員さんや親族が結構いらっしゃいますので足元をすくわれないように注意してください。
では、株式を分散させないようにするにはどうすればいいのでしょうか?
そこが重要な問題です。

国とは、怖いものである

「国家権力の恐ろしさがわかりました。あれは半端ではないですね・・」
検察にまで行くことになったある方がこう私に呟きました。
私も、国家権力がどこまで恐ろしいものか本当にはわかっていないですが、一般の人よりは甘く考えることはない立場にあります。
マスコミなどが首相や政権党を批判している日常の中にいれば、誰もが勘違いをしてしまうと思いますが、国家権力は私たちが考える以上に恐ろしいものです。
私は、徴税の現場で、優しそうな多くの公務員に会ってきましたが、同時に、少なからず、「この人、どう考えてもヤクザと変わらない・・」と思える人にも会ってきています。
そして、検察段階までいくような事件には幸い遭遇したことがないのでわかりませんが、その段階を経験したことがある人ならば、必ず、冒頭の言葉に類することを呟きます。
ドラッカーは言っています。
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“節税”という言葉は、納税者が保有し続けることを特別に許可されていないものはすべて政府に属するということを暗に意味する。
そして、納税者が手元に残せるのは、政府が、その知恵と雅量によって、個人が持つことを許可する範囲内においてである。
もちろん、これらのことが明示的に行われているのは、共産主義国家だけである。
しかし、アメリカにおいてさえ、納税者が保有し続けることを政府が明示したものを除き、すべての所得は政府に属するということは、とくにケネディの時代において、ワシントンとくに政府官僚の間では、当然の常識だった。
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以前にもどこかで引用したことがあるように記憶していますが、ドラッカーが『ポスト資本主義社会』で書いたこの言葉を、どれくらいの読者がちゃんと捉えたかは疑問です。
『ポスト資本主義社会』の本筋からは少し外れたこの一文は、ほとんどの読者に無視されたことでしょう。
しかし、資本主義社会に生きる私たちにとって重要な一文です。
私は、「税金は、私たちが使用する弱小民族語である“日本語”の使用料と思って払え!」とよく言いますが、そう思わなきゃ払えないようなナンセンスが所々にあるのも事実です。
でも、ドラッカーの言うように、私たちが自分のものと思っているものは、「個人が持つことを許可する範囲内」のものと考えたら、そもそも理不尽なんて存在していないわけで、彼らの政策のやり方を見ればそれは明らかです。
・・・とこんなことをビジネスを始めたときから知っていた私はずいぶん得をしてきたなーと思っています。
ここがビジネスの要の一つだとわかっている人は今でも少ないですから、心からそう思います。
国家の意思は意志として、私たちは積極的に節税をすべきです。
グレーゾーンに関しては、私たちの意志と国の意志は徹底的に戦うべきです。
しかし、黒をごまかすことはやらない。
それをやると、国は待っていましたとばかりに私たちの懐をこじ開けます。
これを知らずに、どれだけ多くの人が余計なお金を国に持って行かれていることか・・。
くれぐれもマスコミの垂れ流す国家像を日本国とは思わないことです。

地層

来年発売予定の本があります。
この本は5部立てで、最後の5部はある家族の物語で始まります。
今回は、その本のある部分の抜粋から始めてみようと思います。
第五部 中小企業会計再論
(第一章 省略)
第二章 会計における重要な真実
第一章の家族の物語をお話しましょう。

家族は、現実を見ないふりをして過ごしつつも、在庫や税金の問題に翻弄されるようになりました。そして、昔のようにカゴの現金のやり取りでは商売をやっていくことができないことを悟りはじめました。
そもそも、そのことは借金をしたときに薄々感じていたことでしたが、税金の問題に翻弄されるまでは、何とかなるような気でいました。
家族は、早速、書店に行って会計の本を数冊買ってきました。これさえ見れば、全てが解決すると家族は思いました。

 
空手の試合に出る人が空手の入門書を買ってきて試合に勝とうとしていたら、誰もが笑います。しかし、中小企業や自営業者の現場では、こうしたことが意外にも起きています。
確かに、本を読むだけで解決することもありますから、本を読んでもダメというわけではありませんが、本を読む者の態度に、怪説盲従的な態度や近道思考があることも事実でしょう。
家族の問題も数冊の会計の本で解決するというものではまったくないわけですが、家族はこうして問題の第二段階に突き進んでいくことになります。
この第二段階がどのように進んで行くかは、実際に本を手に取っていただくか、立ち読みいただければと思います。しかし、実際は、このような家族が、会計の本に手を出したときには、手遅れになっていることが多いというのが事実です。これは、会計の世界ではよく起こることです。
今度出版する本でも、この家族を題材に、経営の最初の出発点で誤りをしてしまった・・・としたら(この物語の家族はそうです)、その誤りは最低でも全治三年以上の病になるという話をさせていただいています。
3年なんて言うのは、かなり遠慮をした話で、実際は、5年から7年。場合によっては、完治しない・・という可能性さえあります。
そういう病気の人が、とりあえず会計の本から学ぶ・・という図は、悲劇的に見えて仕方がありません。
私も会計関係の本を書く立場ですから、こんなことを言うことは許されないかもしれませんが、これは誰もが知っておかなくてはならない事実でしょう。
『会社にお金が残らない本当の理由』にも書いたように、経営の舵取りは車のハンドリングのようにはいきません。どちらかと言うと船の操作に似ています。ハンドルを切ってもすぐに方向は変わらないのです。
そして、そのうえ財務的毀損もすぐに改善することはありません。
やったことがすべて地層になってくるからです。
これからの不況は、この培った地層の性質が勝負になります。
先般、あるお客様から
「あんたのおかげで、内部留保も十分にできているから、当分は、アクセルを少しゆるめて経営をしていくよ。不況期の入り口はそれが良いんでしょう?」
と電話をいただきました。このお客様は、良い地層を作り上げることができたというわけです。
私たちは、たまたまですが、今回の事態を想定し、早く警告を発していました。
また、私たちもファンドを売る立場にありましたが、某証券会社の代理店でありながら、ファンドを1円も売らないという暴挙をやっていました(おかげで、代理店は昨年辞めました)。
どれもこれもが過去の行動の地層として結果が出る。不況とは、地層の確認のために起こるような気がしてなりません。
今の時期は過去の行動が問われます。
この時期は、「乗り切ればいい」という態度では乗り切れません。
もう一段謙虚な考えで歩いていきましょう。