ソフトバンクの資金ショートの噂がまた出ています。
秋には資金ショートするというのがその内容ですが、銀行団がソフトバンクの申し出を簡単に断るとは思えませんから、何らかの形で乗り切るのでしょう。
この資金ショートの噂は今回が初めてではありません。
周期的に、ソフトバンク周辺で起こる噂です。
したがって、孫正義という経営者の行動は、財務的視点と心理学的な視点を交えて見てみるとおもしろいのかもしれません。
そのおもしろさを一言で言うと、
「孫正義という経営者は財務的な危機を自ら演出する性行がある・・」
というような言い方になるでしょうか?
まず、財務的視点から見て、財務的危機を演出することは決して悪いことではありません。
会計の専門家は、財務的に安全な経営をほめる傾向がありますが、財務的に安全なだけの会社は、成長余力に乏しく決して安全ではないというのが現実です。
何かの本にも書きましたが、経営者の仕事は財務的バランスを崩すのが重要な仕事であり、孫正義氏の行動は決して間違ったものではありません。
しかし、バランスを崩す程度という話になると、“間違っていない行動”にも問題があります。
経営では財務レバレッジや借入レバレッジなど、バランスを犠牲にするかわりに利益率を高くする手法がいくつかありますが、どれもバランスを崩しすぎては倒産になる可能性も出てきます。
そこで、そのバランスの「適正値」がどこかで誰もが悩むわけです。
ところが、孫正義という経営者は、一般の経営者が悩むラインを軽く超えて、バランスを崩しにかかります。
これは天才だからなのか、度胸があるだけなのかはわかりませんが、もしかしたら、孫正義氏の心理的な性行にある可能性もあります。
中小企業経営者の中には、少しうまくいきはじめると、そのうまくいっている状態が居心地が悪く感じられて、おかしな行動をし出す人たちがいます。
こういう人たちは決して少数派ではなく、中小企業経営者には結構な数がいると思われます。
中には、端から見たらナンセンスに思えるような投資ばかりを続ける、失敗に喜びを感じてしまうような人々も少なくありません。
こうした中小企業経営者の性行には、幼少期の親との関わりからおきている可能性もあるかもしれません・・というか心理学的視点から見ると、そういう言い方が成り立ちます。
私たちは、お金があり、家族が健康で・・・といった一般的な幸せ感が万人共通の幸せ感だと思いがちですが、個々に見ると、そうした一般的幸せ感を幸せ感として持つ人はほとんどいないのが現実です。
そして、孫正義氏の場合は、資金ショートなどの財務的危機を演出することに幸せ感を感じている可能性だってあるのです。
財務というと、絶対的な価値観のように思われがちですが、財務ほど相対的なものはありません。言い方を変えれば、いい加減と言っても良いでしょう。
そうした財務の世界にも、「ここまでいったら、ヤバイでしょ」という経験値があり、それを犯すと下に向かう重力が待っていることになりますが、それをも超える経営者は現に存在しますし、孫正義という経営者もそうした経営者の一人かもしれません(それは、今後結果が出ます)。
実は、財務の難しさはここにあります。
経営者によって百人百様なのです。
ソフトバンクの財務バランスが崩れている噂を聞くたびに、私はそんなことを思います。そして、財務屋の限界も感じます。
さらに、それ以上に経営者としての限界を感じます。
数字のプロである私には、バランスを崩しすぎた経営はできないからです。
時に、そうした経営ができる天才たちを羨ましくも思いますし、そんな思いから過去に、財務の常識を越えた天才たちの申し出を応援してきたこともあります。
ただし、ある種の経営者たちにとっては、そうしたギリギリ感は王道としても、そうしたギリギリが無知から生じた場合はもちろん論外です。
今回のソフトバンクはどうなるか?
注目しましょう。