減価償却の改正、リース資産のオンバランス化、逓増定期保険の資産計上等。
近年、貸借対照表に大きな影響を与える制度会計の変更が続いています。
企業が健全な成長を図る場合、売上や利益の増減よりも、資産、負債、資本のバランス、つまり貸借対照表の方が重要な事は、皆さんご存知でしょう。
従って、この流れは企業経営にとって注意すべき事項です。
つまり、今まで目標にしていた基準が、今後は通用しなくなる可能性が高いのです。
仮に、ある会社のROA(総資産利益率)の目標値が5%、前年度実績が4%だとします。
当年度の業績は、売上高が前年度と同額、業務改善により費用はダウン。
新たな投資や借り入れも行いませんでした。
この場合、通常であれば利益の増加により、ROAは上昇します。
それが、制度会計という判断基準が変わっただけでROAが3%に低下したらどうでしょう?
自社の目標基準をどこにおけばよいのか分からなくなりますよね?
しかも、会社間で適用基準が変われば、比較自体が無意味になってきます。
全ての簿外資産や負債をオンバランス(貸借対照表に計上すること)している会社と、可能な限りオフバランス(貸借対照表に計上しないこと)している会社では、比較しても仕方がないからです。
どちらが実態を反映しているかというと、もちろんオンバランスの方。
今後、融資の際に、金融機関からオンバランスされた貸借対照表を求められる可能性も否定できません。
当事務所は、今までも、お客様の実態を反映した貸借対照表は検討していました。
しかし、今後は、著しい経営環境の変動をより正確に反映させるため、測定できる全ての簿外資産及び負債を貸借対照表に計上し、その上で実態に即した減価償却費の計上、不良資産の時価換算の導入等を行う準備をしております。
当然、必要に応じて、中小企業には求められていない関連会社の連結も行います。
つまり、制度会計に捉われない、その企業独自の実態貸借対照表を作成し、最も厳しい状態での実態ROAを算出する予定です。
これを行ったら、ROAがマイナスに転落する会社も出てくるでしょう(苦笑)
ですが、それが本来の状態であるのですから、早急に立て直しの方策を検討する必要があるとも言えます。
生ぬるい基準で経営を行っている企業と、厳しい基準で経営を行っている企業では、どちらがこれからの厳しい経営環境を乗り切る事が出来るのか?
皆さんであればお分かりになるはずです。
人や会社は、その置かれる環境によって成長の仕方が大きく変わります。
そして、自社の正確な環境を理解し、成長のための方策を立てるのが経営者の仕事です。
皆さんは、自社の環境を正確に理解されていますか?