英会話学校最大手のNOVAが事実上倒産。
解約返金トラブルから発展した業務停止命令から半年も持ちませんでした。
NOVAの場合、契約者から多額の前受金を受け取っていましたが、解約による返金リスクを極めて少なく見積もっていたのです。
報道では前受金は400億円を超えるとありましたが、前期の決算書を確認しても、解約に伴う引当金の計上が少ないように感じます。
決算時には既に問題が表面化していたにもかかわらず・・・。
これを簡単に説明すると、解約時には100円を返金しなければならないにもかかわらず、実際は10円くらいしか解約返金が発生しないだろうと判断したのです。
もちろん、返金のための100円は持っていません。
この判断の甘さは、短期間で倒産まで追い込まれた事実が証明しています。
英会話学校に限らず、前受金を投資費用等に利用し、レバレッジをかけるビジネスモデルは他業界でも存在します。
成長にはレバレッジが不可欠ですが、今回は前受金というレバレッジが、「不祥事」という引き金によって企業を倒産まで追い込む、逆レバレッジ効果となりました。
ですので、NOVAはレバレッジをかけた事業が失敗したという事とは少し違います。
そのレバレッジが内包するリスクが不祥事と連動しやすかったため、逆レバレッジが発生したのです。
あくまで仮定ですが、NOVAに多額の前受金が存在しなければ、こうも短期間に潰れてしまうことはなかったかもしれません。
当然、前受金の存在が急成長を支えたという事実もありますので、否定するわけではありませんが。
しかし、総資産550億円、年商570億円のNOVAクラスでも、一歩間違うと一瞬にして倒産するという実例を提供してくれました。
これは、我々中小企業にとっても他人事ではありません。
最近目立つ食品関係の偽装表示・消費期限切れは、ほとんどが中小企業です。
年商数億円の会社経営者が、テレビカメラを前に憔悴仕切った状態で頭を下げる。
中小企業の不祥事がメディアで報じられてしまえば、その存続は極めて困難ですし、実際その後はほとんど倒産しています。
数百円から数千円の商品偽装で、会社を失ってしまうのは悲しいですね。
同じ食品関係の不祥事でも、不二家は何とか止まったようです。
業績自体は急降下しましたが、倒産には至りませんでした。
これは、ブランド力の大きさ、支援企業等も影響していますが、NOVAに比べて逆レバレッジが小さかったとも言えます。
不祥事等により業績が悪化(=売上が激減)した場合、会社がどれくらい持ちこたえる事が出来るのか?
これは決算書から判断できるので、事前に意識しておくのも必要かもしれません。
そして、不祥事自体が起きないように細心のリスク管理を行い、万が一起きた場合もダメージを最小限に抑えるための仕組みを構築することが最も重要です。
誰もが考え付くことですが、実際にやられている会社は少ないように感じます。
利益を上げるために、ほんの少し相手を欺いたとします。
ですが、その行為に対して、リスクという目に見えない負債が蓄積されていることを忘れてはいけません。
それが決壊したとき、逆レバレッジが起きて会社がどのような末路を辿るかは、実例が証明してくれています。
最近の企業不祥事は、会社で扱っている商品やサービスにどれだけのリスクが内包されているかを改めて考えるきっかけになりますね。