あるレストランの財務諸表を見せられた。
だいたい会計に興味のある人間は、損益計算書よりも貸借対照表に興味があるので、そそくさと貸借対照表を見る。
なにせ、貸借対照表は面白い。
経営者の性格が出る。
だから、占い師の手相と同じようなものなのだ。
私は、このレストランの貸借対照表を見て驚いた。
デブなのだ。
脂肪体質のメタボリック症候群。
かなり運動をしないと死に至る。
そんなレストランだった。
私はつぶやいた。
「これりゃ、レストランと言うよりも、ディズニーランドですね・・」
経営者は、それを誉め言葉だと思ったらしく、ニコニコしている。
んー、ディズニーランドみたいなことをして、メシだけ提供しているというのは不効率なんだけなんだけどなー・・と内心思うが、そのまま言うと怒り出す可能性があるので、経営者が自慢話を終えるまで待つことにする。
積極的に複数店舗を展開したセンスは悪くない。
レストランのΣ(標準偏差=リスク)を低減させる常套手段でもある。
このことを知らないで飲食業をはじめる人が多いから、そういう点で出発点は間違っていない。
しかし、その展開した店舗が予定通りのパフォーマンスを上げていかないと、たちまち装置産業のような貸借対照表になっていくのが飲食業だ。
いやいや、飲食業だけではない。
ほとんどすべての業種に当てはまると言ってもよい。
そして、ディズニーランドのような財務体質になって商売を続けていくことになる。
相撲取りではサッカーはできない。
しかし、体質は相撲取りで、参加する勝負はサッカーなんてことになる。
損益計算書を見ると、利益は出ていた。
どうせ税務会計の利益だから実質は赤字だな・・などと思いつつ。
「立派ですね~」
とヨイショをしておく(旅人同士の出会いとはこんなものです)。
経営のメタボリック症候群も回復には時間がかかる。
税務会計で黒字だとさらにタチが悪い。
デブがデブであることを自覚しない悲劇は、そのうち膝を壊し、股関節を破壊していく。
貸借対照表は、健康診断のチェック表のようなもの。
興味のない人も一年に一回くらいは見ておきたいもの。
経営は、目の前の状況とこの健康診断表との狭間で打ち手を選ぶことこそが面白いのだから・・・・。