企業経営と野球。
似ていると感じました。
1~12ヶ月という期間がある企業経営。
1~9回という回数がある野球。
野球と違って、企業経営に明確な勝ち負けはありません。
ただ、黒字と赤字の分岐点が、勝ち負けの分岐点と認識する方は多いはず。
結果から言うと、企業経営も野球も、最終月・最終回が終わった時点で勝っていればいいのです。
とはいえ、これだけで似ていると言いたい訳ではありません。
ちょっと、面白い本を読んだのです。
『全1192試合 V9巨人のデータ分析』(著者:小野俊哉)
プロ野球史上、唯一無二のV9を達成した時代の巨人を分析した本です。
誰もが読んで面白いという本ではありませんが(苦笑)
この本の中で私が興味を持ったポイントは、1回と3回の得失点差(1回の表と裏が終わったときに、得た点数と失った点数の差)です。
V9時代の巨人は、1回と3回の得失点の差に大きな開きがあります。
特に1回の得失点差は飛び抜けています。
これは、前半で可能な限り差をつけて、後半に向けて守りきるという「先行逃げ切り」パターンが確立されていた証拠です。
初回リードの試合の勝率が、7割7分7厘。
3回終わってリードの試合の勝率が、8割3分1厘。
実はこれ、V9時代の巨人だけではありません。
直近5年間のプロ野球全試合のデータ上も、同じような結果が出ています。
初回リードの試合の勝率が、7割1分3厘(優勝チームは7割7分4厘)。
3回終わってリードの試合の勝率が、7割7分4厘(優勝チームは8割3分3厘)。
つまり、前半にリードをしたチームが圧倒的に勝っているのです。
V9時代の巨人は、この勝利の普遍法則を9年間続けました。
近年のチームの連覇が少ないのは、この普遍法則を続ける事が出来ないからです。
著者はこのように言っています。
「野球は9イニングあるのだから、初回ぐらいでガタガタいうことはない、という考えでは通用しない世界なのです」
これって、企業経営にも当てはまりませんか?
皆さんも、スポーツは先制した方が有利とのイメージをお持ちのはずです。
そして、私の経験上、企業経営においても同じようなイメージを持っています。
第1・四半期を終わって黒字の場合は最終的にも黒字の企業が多く、赤字の企業はそのままズルズル赤字で終わっている企業が多いという感じで・・・。
本来であれば統計をとれば良いのでしょうが、税務署や金融機関でもない限り、統計上必要なサンプルを集められないのが残念です。
当然、企業の売上高は季節変動があります。
季節の影響を受けないビジネスモデルは別として、売上げが多い月と少ない月が明確になっている企業も少なくありません。
この点、野球と違って、必ずしも第1・四半期が全てという訳ではないのは確かです。
とはいえ、終盤になっても赤字のままだったら焦るでしょうし、そうなると、本来出来る事も出来なくなる可能性があります。
しかし、前半に黒字だったら、後半は悪化しそうでも、この黒字を守るような工夫が出来ます。
追い込みに強いという企業は少なからず存在します。
しかし、最終回での逆転劇はドラマチックですが、中小企業の経営にメークドラマを期待してはいけません。
企業経営も、ある意味ゲームであって、そのゲームの指揮を執るのは経営者です。
より有利な試合運びが出来るよう采配を振るうのが経営者の務めのはず。
そのために、自社の月次損益の傾向を確認されるのも面白いと考えます。
“どの月で出した利益が、最終的な黒字につながっているのか?”
という事実も、経営を上手くコントロールする方法の一つかもしれません。