2012年税制改正、隠し玉はあるのか?

今年も、政府から来年度の税制を決める、『税制改正大綱』が公表されました。
今年の税制改正を一言で言うと、消費税等の増税をにらみ、野党の顔色を
うかがった税制改正といった感じです。
しかし、今年もひっそりと小粒ながら隠し玉を忍び込ませてありました。
表向きの内容は、昨年見送られた給与所得控除の見直しと、役員退職金の
課税方式の見直しが再び盛り込まれたことと、相続税の基礎控除引下げと
税率改定は見送りとなったといったところです。
給与所得控除の見直しと、役員退職金の課税方式の見直しについては、昨年も
話題にしたことなのであえて説明はいたしません。
これだけでも十分すぎる改正ですが、一度見せられていると慣れてしまうという
のは恐ろしいことです。
そんな中、私が注目しているのが『国外財産調書制度』です。
これは、その年の12月31日において5千万円を超える国外財産を有する居住者は、
その財産の内容を記載した調書を税務署長に提出しなければならないというもの
です。
この制度には不提出・虚偽記載に対する1年以下の懲役又は50 万円以下の
罰金という罰則が設けられる予定です。
タックス・ヘイヴンを利用した武富士事件以来、企業と個人の海外財産に対する
課税強化の動きが強まっており、この制度も、富裕層に対する課税強化の布石と
いったところでしょう。
また、同時に非居住者に対する監視も強化されています。
それを裏付ける情報が国税庁から公表されています。
国税庁が公表した、平成22年度の租税条約等に基づく情報交換事績を見ると、
日本の国税庁が外国税務当局との情報交換を行った件数が2倍に増加して
います。
さらに、地域別に見ると、アジア・大洋州の国・地域向けの情報要請が全体の
約7割を占めていました。
国税当局による海外財産の課税が強化される一方で、国際課税について
納税者の認識不足により思わぬ課税が起こるケースもあります。
その一例が『183日ルール』というものです。
これは、外国に1年の半分(183日)以上滞在することによって非居住者となり、
日本の税金が課税されなくなるというものです。
しかし、これは『都市伝説』であり、認識誤りです。
この点については国税庁が情報を公開しています。
(以下、抜粋)
滞在日数のみによって判断するものでないことから、外国に1年の半分(183日)以上
滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合があります。
この点について多くの誤解があるようです。
国税当局の監視の目が強まっています。
安易な節税手法を取らないよう十分気をつけてください。
税制改正のくわしい内容と対策については、会員と税務顧問の皆さまには
エーアンドinfoにてお知らせいたします。