日経新聞電子版に、私のコメントが掲載されました。
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武富士事件とは、武富士創業者が長男に多額の生前贈与により節税を
行ったことについて、国税と争っていた事件で、2月の最高裁の判決で、
国税側が敗訴し、長男に対する課税処分が取り消しになった事件のことです。
長男は課税処分後に延滞税を含めた約1600億円をいったん納付して
いたため、判決確定後に納付していた税金の還付を受けましたが、この時に、
税金と一緒に還付加算金(400億円)も受け取っています。
還付加算金とは、納め過ぎた税金の利子にあたるもので、現在は年利4.3%です。
この利率は、現在の低金利を考えると、大変高い金利のため、このような制度で
よいのかが問題視されています。
この記事に対して、日経新聞電子版では、私のコメントは次のように扱われて
います。
銀行の預金利子が1%にも満たない超低金利時代に、
4%を超える還付加算金の高利率は妥当といえるのだろうか。
専門家の間でも意見は様々だ。
エー・アンド・パートナーズ税理士法人(東京・千代田)代表の岡本吏郎税理士は
「納税者の税金滞納を防ぐため、延滞税の利率は一定程度高くあるべきだ。
それと同様に、還付加算金の利率が高ければ、今度は国に対するペナルティーに
なり、武富士の訴訟のような国税当局による行き過ぎた課税処分の抑止にも
つながる」との見方を示す。
そして、私のこのコメントの後に、現在の制度では金利が高すぎだとする青山学院
大学大学院の佐藤正勝教授(租税法)のコメントが掲載されています。
私のコメントは、この記事の内容で間違いありませんが、
私が、コメントで最も言いたかったことは、こういうことではありませんので、この
メールマガジンで補足をしておこうと思います。
今も説明したように、税金は、少なく払うとペナルティーがあります。その代表的な
ものが、罰則的金利に当たる延滞税です。
そして、国が、私たちから税金を取りすぎた場合も、同様の罰則があり、それが
還付加算金です。
これらの金利には、罰則的意味合いがあるため、市場金利よりも高くなっており、
いわゆる公定歩合にあたる金利に4%を加えたものとなっています。
そして、納税者側にも国側にも、こうした懲罰的金利を用意することで、脱税や
無理な取り立てを抑制するようになっているわけですが、実は、納税者側と国側が
平等なわけではありません。
私たち納税者側が払う延滞税などは、いわゆる経費にすることが
できないのです。
しかし、国から取得した還付加算金には、税金がかかります。
したがって、今回の武富士事件でも、国から取得した400億円の半分は税金で
納めることになります。
また、納税者側がかかる延滞税は、二ヶ月を超えると14.6%という懲罰的な
金利になります。
つまり、納税者と国は、平等な制度の元にあるわけではないのです。
今回の日経新聞の記事は、趣旨が違うところにありますから、この私の指摘が記事
になることはありませんでしたが、最も重要なことは、この削除された部分にこそ
あると思っています。