税制改正で決まった法人税減税がなくなりそうです。
しかし、今回の政府の決定は、
各種特例を廃止して、税率下げを図りました。
税率下げはなくなりましたが、廃止した特例の復活はありません。
さらに、役員報酬に対する所得税の増税も、そのままです。
震災復興という国家目標がありますから、
致し方ないところもあります。
今は、国民全員が耐えるという時期なのでしょう。
しかし、意外に思うかもしれませんが、この決定を喜んでいる業種もあります。
・保険代理店
・銀行
この2つの業種は大喜びです。
まずは、保険代理店。
もし、法人税減税が決まっていたら、
保険代理店が売っていた保険商品を使った節税ができなくなるところでした。
保険商品に限りませんが、業者が推奨する節税策とは、
節税商品の手数料を払っても、支払う税金よりも少ないことで成り立っています。
そこで、保険代理店の中には、
節税の設計書で、所得が800万円以下の中小企業を相手に約40%の税率を適用して
節税になることを売り込むところも少なくありませんでした(それ以外にも、騙しは隠されています)。
ところが、その税率そのものが下がってしまう。これで、手数料を払ってまで節税保険商品を買う意味がなくなります。
一部の商品を除くと、保険商品による節税策はシャットアウトされるところでした(意図的ではありませんが・・)。
また、現在、行っている節税保険の対策も必要になり、
解約も増えるところでしたが、それが回避されることになりました。
もう一つは喜んでいるのは銀行。
今回の税率下げで、
銀行がたくさん積んでいる繰延税金資産の取り崩しの必要が生じるはずでした。
元々、繰延税金資産は、銀行の救済のために前倒しで導入された経緯がありました。
それが、法人税率の下げで、繰延税金資産の取り崩しの必要になるということで、
業界では大騒ぎになっていました。
なぜならば、
繰延税金資産とは、税務会計と企業会計の差によって、前払いされている税金を
前払い資産として計上するものですから、
その前払い税金とされるものが、税率の下げ分だけ資産から取り崩さなくてはならなくなるからです。
そして、これにより最終赤字に陥るとされた銀行もあったのです。
こうした話は、単なる数字の遊びみたいな所があります。
繰延税金資産を崩そうが崩さなかろうが、経営の実質は変わりません。
しかし、その表面の見た目が変わると言うことで問題になっていました。
この2つの業界は、
今回の税率下げ中止で、かなりほっとしていることと思います。
増税色一色の中で、
こんな景色もあるのです。