税理士は各地域の税理士会に所属しており、2、3ヶ月毎に所轄税務署と
『事務連絡会』というものを開いています。
これは、その連絡会の中での税務署とのやり取りです。
税理士 「この場合、本当に確定申告しなくていいんですね?」
税務署 「しょうがないですね。申告をしろという規定がありませんから・・・」
税務署 「それで結構です・・・。」
また、この国は行き当たりばったりの制度を作ってしまいました。
それは『年金取得者の申告不要制度』というものです。
大ざっぱに言うと、年金400万円以下の人は確定申告をしなくてもいいという
制度です。
このようなできたばかりの制度には多くの欠陥があるものです。
もう少し詳しくお話いたします。
年金をもらっている人の中で、一定の金額以上の年金をもらっている人に
ついては『扶養親族等申告書』というものを提出しています。
もちろん出している人にしかわからない話ですが、一言でいうと沢山の年金を
もらっている人のところに届く書類です。
この書類に扶養となる家族をたくさん書いて出すことによって、本来は年金から
控除される税金が少なくなったり、ゼロになったりします。
事例でお話しましょう。
例えば、お爺さん、お婆さん、お父さん、お母さん、子供2人という
家族がいたとします。
ここでは、お父さんは会社を経営しているオーナー社長だと思ってください。
そして、お爺さんは前経営者で、退職して沢山の年金をもらっています。
この場合、お婆さん、お母さん、子供2人は誰の扶養につけるでしょうか?
通常であれば、一番収入の多い、お父さんの扶養にするでしょう。
オーナー社長とお爺さんはそれぞれ確定申告を行い、税金を納めています。
ところが、今回の年金申告不要制度を乱用すると次のようなことが
できてしまうというのです。
1.年金機構の『扶養親族等申告書』にお婆ちゃん、お母さん、子供2人を
記載して提出
2.社長が確定申告を行う。その際、お婆ちゃん、お母さん、子供2人を
扶養親族として申告をする。
つまり、扶養親族の変更です。
これで、お婆ちゃん、お母さん、子供はお爺さんと社長の二人の扶養親族と
なることになります。
従来であれば、扶養に変更があり納税が発生する場合には確定申告が
必要になりました。
しかし、今回の申告不要制度については、年金が400万円以下であり、
かつ他の所得が20万円未満である場合には確定申告が不要となっています。
ただし、今までの話はすべて国税だけの話です。
住民税についてはこの申告不要制度がありません。
つまり、所得税の確定申告は行う必要はありませんが、住民税の確定申告は
必要なのです。
先ほどの扶養変更についても住民税の申告では扶養を変えたことをちゃんと
申告しなければいけません。
これによって扶養が重複していることが明らかとなり税務署より何らかの
お尋ねが届くことになる筈です。
この手の税法の抜け穴を使ったテクニカルな節税ノウハウが出回る可能性が
ありますが、これは明らかな脱税行為であり、制度上の瑕疵を悪用するものです。
このような瑕疵は必ず立法手段によって対処されます。
目先の怪しい話に飛びつくことのないように十分ご注意ください。