社長 「先生、今、税務署の方が来られまして・・・」
税務署の調査です。
私 「分かりました、私が行くまで中には入れないでくださいね。」
社長 「あっ、いいんです先生、もう調査はじめていただきました。」
私 「エェーそうなんですか!」
私 「今すぐ行きますから待っていてください(汗)」
普通の社長であれば税務調査は少なからず嫌がるものです。
ところが、この社長は快く税務調査を受け入れてしまいました。
実は、そこにはある理由がありました。
以前、税務調査を受けたときに、従業員による多額の不正が発見されたと
いうのです。
実は、税務調査では、税金の申告漏れだけではなく
社内不正や経理の不備が発見されることが少なくありません。
所轄の税務署より調査の連絡があったことを知った従業員が
横領の告白をしてきたというケースもあるくらいです。
また、その逆に、以前の税務調査で不正を指摘されなかったため
その後、不正金額が増加したというケースもあります。
一般の調査官による税務調査は、決められた期間で一定の
件数をこなす必要があり、見落とされることも珍しくありません。
ところが、調査官の中には査察部出身の者もおり、彼らは一般の調査官と
目の付けどころが違います。
帳簿書類の日付や筆跡、印鑑の種類まで確認し、書類の偽造までも見破ります。
その結果、申告漏れの税金よりも、発見される不正金額のほうが大きい場合
があるのです。
これは本当に珍しいことではありません。
多くの税理士が経験していることです。
税務調査が行われるまで、従業員の不正が続いてしまうのでは
困りますし、できれば、税務調査を受けずに不正を防止できるに
こしたことはありません。
まず、ある職務が一人の従業員に集中している仕事は要注意です。
・発注業務を一人の従業員が行っている。
・経理業務を一人の従業員が行っている。
・集金業務を一人の従業員が行っている。
・業者との折衝が 一人の従業員が行っている。
・請求書の発行を一人の従業員が行っている。
これらは全て不正の温床となります。
次に、不正を防止するために、次のことを徹底しましょう。
・予算制度の採用
・貯蔵品の受払簿を作成
・定額資金前渡制の採用
・現金回収は避ける
・領収証にはナンバリングをする
(書き損じは破棄させない)
・売掛金残高は確認状を送付
・定期的な棚卸(立会人を付ける)
・リベートの有無を確認する。
また、ある社長はこんなことも行っています。
その社長は、どんなに量が多くても全ての請求書に目を通し、
自ら決裁をします。
そして、その決裁は、必ず社員が揃っている前で、大きな声で全員に
聞こえるように質問をしながら行うのです。
これは実に上手いやり方です。
社長 「おーい、この外注なんでこんなに高いんだー?」
社員A「先月の○○が一緒になっているからです。」
社員B「それは先月に請求になっているはずです・・・」
社長 「おい、どうなってんだー(怒)」
こんな感じで、従業員どうしが牽制し合い、
社長も現場で起こっている問題が見えてきます。
その他にも不正を防止する手段は沢山ありますが
あらゆる手段を徹底したとしても不正は完全には無くすことが
できません。
それは、経営者自身による不正が残っているためです。
以前に、こんなことがありました。
預金の受払いと経理を全て奥さまが一人で行っていた会社がありました。
以前からどうしても預金の受払いが合わなかったため調査していったところ
犯人は社長の奥さまだったのです。
もちろん、その逆もありました。
売上金の集金をすべて社長が行っていたのですが、
入金額が少なく現金がマイナス残高になってしまうのです。
社長が奥さまに内緒で売上げの一部を抜いていました。
いずれも立派は『横領』です。
社長とその親族による横領は税務調査では大きなペナルティーと
なります。
日頃から、適切な経理を心がけ、税理士による監査を受けることは
税務調査対策だけではなく、大きな意味があるのです。