税率が変わるタイミングでよく耳にする話
◆“消費税率が上がるタイミングでは、金(ゴールド)の購入がいい”
これはよく耳にする話です。
10,000,000円分の金の購入・売却を例に考えてみます。
■金の購入には消費税がかかるため、旧消費税率(例えば現状の5%とします)で金を購入すると税込みで10,500,000円の支出になる。 ■その後、消費税率が上がった直後(例えば噂されている10%とします)に金を売却すると11,000,000円の収入になる。 ■つまり、税率差分の500,000円が儲かることになる。 |
一見すると、非常においしい話に見えますが・・・、これには相場観が全然考慮されておりません。
このようなおいしい話があるのであれば、それは相場に反映され、消費税率が上がる前にはある程度の上昇を見せることになります。
そして、消費税率が上がった直後に値段が落ち着くことになる。つまりは、高く買って安く売ることになるため、税率差のうまみは消えてしまうのです。
◆これに似た話を最近耳にするようになりました。
“法人税率が下がるタイミングでは、保険の購入がいい”
皆さんご存知のとおり、4月より法人税率が下がります。(現時点では、正確には、下がるだろう・・・ですが。)
税制改正大綱にも記載されていましたが、実効税率ベースで約5%も下がることになります。
これを利用した保険購入のロジックは次のとおりです。
■法人税率が下がる前に保険に加入する。 ■損金部分があれば、それに係る節税額は、高い旧法人税率で計算される。 ■その後、税率が下がってから保険を解約する。 ■損金となっていた部分は、解約時に雑収入として受け入れることになるため、法人税が課税されるが、その時には税率が下がった後の低い法人税率で課税されるため、税率差分のおよそ5%が儲かることになる。 |
先ほどの消費税と同様で、表面だけとらえると非常にロジカルでいい話のように聞こえます。
ですが、きちんとした検証を行うことは必要です。
むしろ、いい話に聞こえるからこそ、適切な検証を行う必要があるのです。
例えば、年払10,000,000円で全額損金となるタイプの保険に加入したとします。
払込額や返戻額、実質返戻率等の推移は次の通りとします。
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
払込額 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 0 | 50,000,000 | |
法人税率 | 30% | 25% | 25% | 25% | 25% | 25% | ― | |
節税額 | 3,000,000 | 2,500,000 | 2,500,000 | 2,500,000 | 2,500,000 | 0 | 13,000,000 | A |
返戻額 | 50,000,000 | 50,000,000 | ||||||
単純返戻率 | 60% | 70% | 80% | 90% | 100% | ― | ||
納税額 | 12,500,000 | 12,500,000 | B | |||||
A-B= | 500,000 | C |
※税効果を除いた単純返戻率で100%を超えるのは、どんなに早くても丸5年はかかるので、解約のタイミングを6年目と仮定しました。
節税額(A)から納税額(B)を差し引くと、1年目に払い込んだ10,000,000円に対する税率差として500,000円が儲かることになります。(C)
確かに、表面的な話どおりの効果はあるようです。
ですが、その500,000円は、5年間資金を凍結させた見返りとしての500,000円(いわば利息)であり、また、単純返戻率が100%に達するという前提での話になります。
しかしながら、単純にすべてを否定できるわけでもありません。
資金に余裕がある会社であれば、5年間資金を凍結させても何ら困ることはなく、その結果として、年利1%の利息を受けながら保険の役務提供を受けることは悪い話ではないはずです。
また、被保険者の年齢や保険会社によっては、単純返戻率で100%を超えることもざらにあります。
つまりは個別事情による、ということです。
いずれにしろ、表面的な話だけに踊らされず、適切な検証を行ったうえで行動に移すことが必要です。
それは肯定的な話にしても、否定的な話にしてもです。