タクシー業界が厳しいというお話し、1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
実際、運転手さんは月収20万円を稼ぐのも、なかなか難しいようです。
でもタクシーたくさん見ますよね?むしろ増えているような気がしませんか?
運転手さんは稼げないのに、なぜタクシーの台数は増えているのか。
結論から言ってしまえば、タクシー会社はそれでも儲かる構造になっているからです。
それでは、タクシー会社の収益構造とは、いったいどのようなものか、見ていくことにしましょう。
会社の収益構造は、通常の税務申告用の損益計算書からは、なかなか見えてきません。
収益構造を明らかにするには、損益計算書を戦略用の変動損益計算書に組み替える必要があります。
変動損益計算書とは、簡単に言うと損益計算書上の全ての経費を売上の増減に比例して増減する変動費と、売上の増減に関わらず発生する固定費に分け、並び変えたものを言います。
売上高から変動費を引いた限界利益と言われるものが商品(製品)やサービスの付加価値を意味し、この限界利益と固定費を見ることで収益構造を明確にしていきます。
タクシー会社の場合、売上の増減に応じて増減する変動費は、運転手さんの人件費、燃料代などです。
通常、人件費は固定費ですが、タクシーの運転手さんの場合は歩合制で売上に応じた賃金体系であるため、会社にとっては変動費となります。
売上の増減に関わらず発生する固定費は、車の減価償却費、事務員や経営者の給料、事務所の維持費等です。
各タクシーの売上高の合計から変動費を引いたのが限界利益で、この限界利益が会社全体として多ければ多いほど固定費をまかない、利益を確保することができます。
タクシー会社の場合、限界利益を多くするには2つの方法があります。
1つは運転手さんの人件費、燃料代等の変動費を減らすこと。
もう1つは限界利益を稼ぎ出す台数を増やすことです。
台数が増えれば当然、競争が増すため1台あたりの売上は下がりますが、トータルで限界利益が固定費をカバーできる限りは、台数を増やせば増やすほど利益があがるという構造になります。
1台あたりの限界利益が減れば、台数を増やして限界利益を増やすことで固定費をカバーしようとするため、余計に台数が増えるのです。
この収益構造こそが運転手さんは稼げないにも関わらず、タクシーの台数が増えていく理由です。
しかし、台数が増えれば増えるほど、運転手さんの収入が減少しているということになりますので、この収益構造が良いとは言えないでしょう・・・
簡単にではありますが、変動損益計算書の考え方によりタクシー会社の収益構造を紐解いてみました。
経営者にとって自社の収益構造を理解するツールとして非常に重要な役割を成す変動損益計算書ですが、意外とその存在をご存じなかったり、知ってはいても作成したことのない方が多いようです。
変動損益計算書は自社の収益構造を明らかにすることができ、目標設定、人材採用、設備投資等、様々な経営判断に役立つものです。
もし、これまで変動損益計算書を作成したことがなければ、是非作成してみてください。
難しいようであれば、顧問税理士の先生に作成の依頼をしてみてください。
通常の税務申告用の損益計算書からは見えてこなかった、自社の収益構造が見えてくると同時に、そこから見えてきた数字が、この先の経営判断に、きっと役立つはずです。