2012年問題、その時中小企業は・・

2012年問題といっても、マヤ文明とか地球崩壊の話ではありません。
『中小企業の2012年問題』です。
以前に、2007年問題が社会的にクローズアップされたことがありました。
これは、団塊の世代と言われる1947~1949年生まれの人たちが60歳で定年を
迎える、2007年~2012年までの間に大量退職すると見込まれていた問題です。
しかし、フタを開けてみれば、高年齢者雇用安定法の改正や一時的な好景気に
後押しされ、2007年に大量に退職するはずであった「団塊世代」の退職(いわゆる
『2007 年問題』)が5年間先送りされる格好になった、これが今に続く『2012年問題』
です。
2007年問題と騒がれた大量退職は、2012年頃から再就職期間がおわる、65~75歳
の間にリタイアすると見込まれています。
一方で、団塊世代の経営者が60歳で社長を退くことは稀ですが、2012年以後、65歳を過ぎるようになると事業承継もいよいよ避けては通れない問題となってきました。
中小企業の事業承継というと、ひと昔前は、身内の者が後を継ぐのが当たり前でした。
しかし、中小企業の事業承継は時代とともに変化してきました。
中小企業の経営者が身内に事業を承継する割合は、20年前の80%から、30%
台に減少し、その代わりに、身内外に承継する割合は、6%から40%に増加しています。
その背景には以前まで上場企業や大企業だけの話と思われていたM&Aが、
中小企業にまで広がってきたことがあげられます。
リーマンショック以降、M&Aの件数は減少しましたが、2007年には年間約2700件のM&Aが成立しており、これは土日を除いた平日に1日約10件ものM&Aが
全国のどこかで行われていた計算になります。
そして、そのうちの約7割が非上場企業が当事者となった案件です。
中小企業のM&Aは話題性からして、マスコミにとりあげられることはありませんが、中小企業のM&Aが身近なものになっていることを物語るひとつの事実です。
それでは、私が以前に関わったM&Aの事例をお話いたします。
その会社は、年商1億円程度のサービス業で、役員を含めた従業員数は5名の小規模な法人でしたが、従業員の高齢化と後継者不在という問題を抱えていました。
他で勤めていた長男を入社させ、事業承継を試みましたが、従業員と馴染むことができず、また、経営者としての適性もなかったことから親族内承継を断念いたしました。
相談をうけた私は、すぐに株式譲渡によるM&Aを提案しました。
相談を受けた当時は、売上の半分以上を行政からの仕事を受託していたため、
利益率も高く、内部留保も十分にありました。
しかし、市の予算縮減と規制緩和の流れが徐々に強くなっていたため、M&Aを
行うなら今しかないと思ったのです。
幸いにも買い手企業はすぐに見つかりました。
その会社は同業者ではなく、類似のサービス事業を行っており、シナジー効果が
期待できる企業でした。
社長の希望額は5000万円でしたが、デューデリジェンスの結果、売上げの下降
要因、設備の老朽化等があったことから、私は譲渡価格を約4000万円と算出し
ました。
買い手企業の提示してきた売却希望価格も私の算出した評価額を若干下回る程度の価格でした。
しかし、売り手企業の社長は一歩も譲らず、歩み寄りができなかったため、このM&Aは破談となってしまいました。
その数年後です、心配していたとおり、行政の仕事は競争入札となり、さらに規制緩和から、他地区の業者が進出してきた結果、売上げはあっというまに減少してしまいました。
その後、社長の体力も低下し、もはや会社を誰かに任せるしかないという状態にまでなったときに、ようやく社長は会社を売る覚悟を決めました。
なんとか買い手企業を見つけることができましたが、売上はかなり落ち込んでいたことから、M&Aというよりは、仕事を引き受けてもらうだけの形になり、のれん評価はゼロ評価となってしまいました。
結局、株はいらないと言われ、雇用維持を条件とした、事業譲渡を行いました。
それでも、取引先に迷惑をかけられないという思いから、社長は事業を譲渡され、
その後自ら残った会社を清算しました。
結果論に聞こえてしまうかもしれませんが、M&Aを見極めるうえでの重要なポイントは、自社の価値を客観的に見る目と譲渡のタイミングです。
譲渡のタイミングは本当に長くありません。
具体例を一つだけあげます。
『2期連続で赤字をだすとM&Aのハードルは確実にあがります。』
タイミングを逃してしまうと、企業の価値はどんどん下がってしまうだけでなく、最悪の場合、自主廃業の選択肢しか無くなってしまいます。
中小企業の6割が後継者不在という現実を抱えています。
事業承継でお悩みの方やまだ後継者が決まっていない方は一日も早く専門家にご相談ください。
具体的に何も考えておらず、何を相談していいかわからないとおっしゃられる方がたくさんいらっしゃいますが、ご相談の段階では何も考えていただく必要はありません。
現状と社長のお悩みをそのままお聞かせください。
いただいた情報から最善の選択肢をご提案し、社長と一緒に考えさせていただくことが我々専門家の務めです。