もしも、ウーロン茶税が施行されたら・・・

税制改正において、大衆の視点から注目されていたのが、自動車税の動向です。
税率の引き下げなどで減税路線にはなったものの、結局、廃止には至らず、自動車業界からは批判が噴出しています。
“モノ”に対する税を見渡すと、自動車税は“買い手”が払う税金であり、たばこ税や酒税は“売り手”が払う税金です。
しかし、『払う』=『負担する』という図式が成り立たないことは、ご理解いただけるでしょうか?
このような税は、税負担も含めた『価格』として需要供給曲線に収斂され、結局は、“売り手”と“買い手”が痛み分けで負担するような形に落ち着くのです。
(経済学においては、『税の等価性』といいます。)
しかし、“売り手”と“買い手”が双方で負担するとはいえ、その負担割合はどのように決定されるのでしょうか?
その決定に大きく作用するのが、『弾力性』です。
『弾力性』とは、その商品から、他の商品へ移り変わるエネルギーの大小をいいます。
一般的にコモディティ化している商品は、弾力性が大きくなります。
(例:トイレットペーパーは、A商品でもB商品でも大差はない。消費者は簡単に商品を変更する=弾力性が大きい)
そして、先ほどのような税は、弾力性の小さい方が、より多く負担することになります。


例えば、ウーロン茶税なるものが施行されたとします。買い手は、ペットボトル1本につき50円を払わなければならず、既存のペットボトル150円が、税の追加により200円になってしまいました。
今までウーロン茶を好んでいた消費者は、いとも簡単に、ウーロン茶を捨ててジャスミン茶へ乗り換えました。
つまり、『ウーロン茶の弾力性は大きい』、ということです。
ウーロン茶メーカーは販売不振で困ってしまい、既存価格150円のペットボトルを110円に値下げしました。
消費者は、50円のウーロン茶税を負担しなければならないため、実際の購入価格は160円になりますが、(もともとウーロン茶フリークなわけですから)ここまで値段が下がったことで、ジャスミン茶への浮気をやめました。


このように、“買い手”に対して課したはずの50円は、値下げという行為を通すことで、“売り手”が実質的に40円も負担することになります。
メーカーは、ウーロン茶を製造販売するしかない(ウーロン茶市場から移る力が小さい)わけですから弾力性が小さい、つまり、税を多く負担しなければならなくなった、ということです。
この『弾力性』について、中小企業経営者である皆さまが意識しなければならないことは、“商品価格”との関係です。
弾力性の大きな商品であれば、多少の値上げでも市場は敏感に反応し、消費者は簡単に別の商品へ移ってしまいます。
逆に、弾力性の小さい商品であれば、ある程度の値上げを断行しても、代替となる他の商品がないわけですから、消費者はそのまま留まることになります。
弾力性:大 ⇒
消費者の流動性:大
大幅な値上げは禁物。逆に、わずかな値下げで取り込める新規顧客はいないか?
弾力性:小 ⇒
消費者の流動性:小
遠慮した値上げにより、失っている利益はないか?
自社の商品価格の改定を行う際には、商品別、地域別、お客様のランク別など、一度各カテゴリーの弾力性を分析し、その弾力性に見合った商品価格の設計をしてください。