1998年、ドラッカーは次のように言いました。
会計システム上の問題は単純である。
会計システムは、どれだけの収入があるかはつかんでいる。
どれだけの支出があるかもつかんでいる。
どこへ支出しているかさえもわかる。
しかし、支出と成果を結びつけることができない。
また、次のようにも言っています。
あらゆる企業が、組織が会計システムに基づいて意思決定を行っている。
それがいかようにも操作できる代物であることを承知しつつ、そうしている。
こうも言っています。
会計システムのどの部分が信用でき、どの部分が信用できないかは明かである。
われわれがとうてい歩くべきでない薄氷の上にいることは明かである。
私の新著『実学 中小企業のパーフェクト会計』は、このドラッカーの提言に対する
会計側からの答えです(中小企業だからできる答えです)。
もちろん、ドラッカーの言っていることは大企業会計に対するものであり、
中小企業会計を視野に入れているとは思われませんが、中小企業会計は、
大企業会計よりも酷いことになっているのが実態です。
そして、私は、今まで、そのことを何冊かの本で主張し、対応策を提案してきました。
今回の新著は、そうした私の考えを実務ベースでまとめてみた本です。
そして、中小企業会計側からのドラッカーの問題提起に対する回答としています。
もちろん、本には何もかも載せることはできません。
おそらく、本に書いたことは、私の実務経験から培ったものの30%程度の
ものでしかありません。
また、最も言いたいことは活字では無理という制約もありますから、100%回答
したとは思っていませんが、小さな企業向けの「成果会計」。そして、「思想として
の会計」というドラッカー先生が聞いたら何て言うかちょっと挑戦的な考えも入れて本にしました。
おそらく、2012年以後、会計の役割は変わると思います。
もちろん、2012年から「今日から変わります」と言って、ガラっと変わることは
ありませんが、少しずつ変わっていくはずです (その変わる様の予告も本の中に
さり気なく入れてあります)。
残念ながら、多くの企業はそのことに気づかずに、従来概念で数字を見ていく
ことになるとは思いますが、ドラッカーが10年以上前に提起したことの奥深い
意味を誰もが痛感する時は、すぐそこまで来ています。
会計が得意としてきた、収入と支出の把握は、これからも必要ですが、その意味が
変わってしまう時代になってしまいました。
そういう時代が本当に来てしまうとは・・と個人的にも驚きですが。ドラッカーが
提言した製造業労働者の激減同様に、すでに、事態は動き始めたとみていい
でしょう。
新著『実学 中小企業のパーフェクト会計』をそうした視点で読んでいただくのも
良いと思います。